コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

肺血栓塞栓症 はいけっせんそくせんしょうPulmonary Thromboembolism

1件 の用語解説(肺血栓塞栓症の意味・用語解説を検索)

家庭医学館の解説

はいけっせんそくせんしょう【肺血栓塞栓症 Pulmonary Thromboembolism】

◎肺でのガス交換不十分
[どんな病気か]
 人の血液の流れは、心臓から押し出された血液が、動脈という血管を通り、全身の組織に酸素を運搬します。
 全身の組織にはりめぐらされた毛細血管(もうさいけっかん)では、動脈血の酸素と、組織でつくられた二酸化炭素炭酸ガス)や老廃物とが交換され、この血液が静脈血となって、心臓にもどってきます。これを体循環(たいじゅんかん)といいます。
 こうして、心臓にもどってきた血液は、肺動脈という血管を通って肺に送られ、肺(肺胞(はいほう))の毛細血管網で、血液の二酸化炭素と吸い込んだ空気の酸素が交換され(ガス交換(こうかん))、また酸素を取り込んだ血液(動脈血)となって、心臓にもどってきます。これを肺循環(はいじゅんかん)といいます。
 肺血栓塞栓症とは、この肺動脈に血栓(血液のかたまり)がつまり、肺への血液の流れが悪くなる病気です。
 その結果、肺でのガス交換が十分できなくなり、動脈血の酸素濃度が低くなるため、いろいろなからだの異常がおこってきます。
 小さな血のかたまりは、人間の本来からだに備わっている機能で、自然に溶けて再開通しますが、大きなかたまりのときには、いろいろな症状が強く現われ、とくに太い肺動脈がつまると、突然死(とつぜんし)することもあります。
[症状]
 よくみられる症状としては、突然の呼吸困難、胸の痛み、血液のまじったたん、胸部の不快感などです。
 しかし、これらの症状がすべてそろうことはむしろ少なく、症状は軽いときもあるので、注意が必要です。
 突然に呼吸困難がおこり、胸部が不快になり、脈が速くなったときは、心臓の病気や肺が破れる自然気胸(しぜんききょう)という病気のほかに、この病気の疑いもあります。すぐに受診して、検査を受ける必要があります。
[原因]
 もっとも多いのは、下肢(かし)(脚(あし))の静脈にできた血栓が、肺まで運ばれて、肺動脈をつまらせるものです。
 股関節(こかんせつ)や大腿骨(だいたいこつ)の手術後、また、泌尿器科(ひにょうきか)や婦人科の病気で下腹部や骨盤内(こつばんない)の手術を受けたとき、あるいは神経の病気で下肢がまひしている場合に、下肢の静脈に血栓ができることがあります。
 そのほか、1週間以上ベッドの上で安静にしていたとか、妊娠しているとか、自動車の運転などで長時間座ったままでいた場合、圧迫されて下肢の血液の流れが悪くなり、血栓ができやすくなるので、注意が必要です。
[検査と診断]
 この病気を早期に診断するのはむずかしいことが多いのですが、つぎのような検査が必要になります。
●胸部X線写真
 ふつう激しい変化はみられません。しかし、血液の流れが悪くなり、肺の組織に壊死(えし)がおこると(肺梗塞(はいこうそく))、陰影が現われてきます。
心電図心エコー図
 肺動脈がつまると、肺動脈が出ている心臓の右心房(うしんぼう)・右心室(うしんしつ)など(右心系)に負荷がかかるため、心電図に変化が現われます。
 心筋梗塞(しんきんこうそく)は、まったく別の病気ですが、ときに肺血栓塞栓症と心筋梗塞の心電図が似ることもあるので、注意する必要があります。
 こういう場合は、その後の心電図の変化や、心筋梗塞のときに血中に増える種々の酵素(こうそ)を調べ、鑑別します。
 右心系の負担がはっきりすれば、より診断が確実になるので、超音波を利用した心エコー図で、心臓の動きをみることはとても役に立ちます。
 しかし、これらの検査では、肺動脈の50%以上が閉塞(へいそく)しないと異常がみられないので、閉塞が軽い場合には、参考にならないこともあります。
●動脈血(どうみゃくけつ)ガス分析(ぶんせき)
 手、または大腿部(だいたいぶ)(太もも)の動脈に針を刺し、得られた動脈血中の酸素濃度を測定します。
 肺動脈がつまると、ガス交換がうまくいかず、酸素濃度が低下します。胸部X線検査で、広い範囲の異常がないのに、酸素濃度がきわめて低いときは、この病気を強く疑う根拠となります。
●肺血流(はいけつりゅう)シンチグラム
 血管の中に放射性の物質(アイソトープ)を注入し、その放射線のようすから、血液の肺への流れを確かめる検査です。
 肺動脈の流れが悪いところは、正常のところと比べてアイソトープの検出が悪くなるので、診断できます。
●肺血管造影(はいけっかんぞうえい)
 肺血流シンチグラムでは、細い肺動脈の閉塞がはっきりしないことがあります。その場合は、X線に写る造影剤を血液に入れて肺動脈を写し出す方法があります。これを肺血管造影といいます。
◎血を固まりにくくする薬で治療
[治療]
 この病気は、突然におこることが多く、しかも症状が重いため(急性肺血栓塞栓症)、早く治療を開始しないと命にかかわる場合もあります。そのため、前述した検査すべてを実施する時間的余裕はなく、この病気が強く疑われる場合には、治療を先に進めることもあります。
 治療には、肺動脈をつまらせた血栓を溶かす目的で、ウロキナーゼなどの薬が使われます。
 また、血栓が大きくなるのを防ぎ、再発を予防するため、つまり血液の凝固性(ぎょうこせい)を抑えるため、ヘパリンなどの薬も使われます。
 しかし、これらの薬は、量を多く使用すると、逆に出血しやすくなるため、何度も血液の固まり具合の検査をくり返しながら、慎重に薬の量を決めます。
 また、慢性に血栓が肺動脈を閉塞していることがあり(慢性肺血栓塞栓症)、この場合は血のかたまりがかたくなっていて、薬では溶かすことがむずかしいため、太い肺動脈につまった血栓を手術で取り除くこともあります。
[予防]
 予防として、手術の後などは、医師の指示のもとに、なるべく早く歩くようにします。ベッドでの長期の安静が必要な場合は、ベッドの上で脚の運動、マッサージなどをすることが重要です。
 また、脚が急に腫(は)れてきたり、痛んだりした場合には、下肢の静脈に血栓ができていないか、できるだけ早く調べる必要があります。

出典|小学館
家庭医学館について | 情報

世界大百科事典内の肺血栓塞栓症の言及

【呼吸機能】より

…血流分布の変化として,肺鬱血(うつけつ)の場合,肺尖で血流が増加し,肺下部で減少する。肺血栓塞栓症などでは,局所的肺血流欠損がみられ,換気血流比不均等性が増加して,肺胞気と動脈血間の酸素分圧較差が増大して,動脈血酸素分圧の低下や二酸化炭素分圧の上昇をきたす。また動脈血二酸化炭素分圧は約40mmHgに保たれるように種々の因子によって微調整されているが,慢性閉塞性肺疾患などで呼吸中枢の二酸化炭素に対する感受性が低下している場合には,動脈血酸素分圧の低下が呼吸刺激となっている。…

※「肺血栓塞栓症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

稀勢の里寛

1986- 平成時代の力士。昭和61年7月3日生まれ。中学卒で鳴戸部屋に入門し,平成14年3月初土俵。16年5月新十両,同年11月には18歳4ヵ月で新入幕をはたす。18年7月新三役小結,21年3月新関...

続きを読む

コトバンク for iPhone

肺血栓塞栓症の関連情報