結核菌初感染に次いで起こる肺門リンパ節腫張のこと。すなわち,結核菌が初めて生体に侵入したとき生体に特有の炎症を起こすが,これを初感染と呼び,次いで起こる所属リンパ節の病変とをあわせて初期変化群と呼ぶ。結核は90%以上が経気道感染であるため,初感染巣は肺に形成され,これに対応して肺門リンパ節の病変が起こる。このリンパ節病変の程度は個人差が大きく,通常はリンパ節内の一部にとどまることが多いが,宿主の抵抗力が低下している場合や,菌量,毒力が強い場合には,リンパ節腫張がスズメの卵大からニワトリの卵大に達することもある。このように,初感染に続き,異常に腫大した肺門リンパ節が胸部X線写真でみられた場合を肺門リンパ節結核と呼ぶ。したがって,この疾患はツベルクリン反応陽転後まもなくみられ,小児に多い。通常,肺門リンパ節腫張は一側性である。自覚症状としては咳,発熱,全身倦怠,食欲不振などを訴える。肺門リンパ節結核の予後は良好で,石灰沈着を残して治癒することが多いが,ごくまれにリンパ節が気管支内に破れ,結核性肺炎を起こすことがある。
→結核
執筆者:龍神 良忠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
もっとも多い初期結核症で、結核菌が未感染の個体の肺胞まで到着して初感染原発巣をつくると、菌は過敏性も免疫もまだ獲得しないうちにリンパの流れにのって所属リンパ節に流入し、初感染リンパ節巣を形成する。病勢の盛んなときは縦隔リンパ節にも連続的に罹患(りかん)し、最終的には右静脈角リンパ節より菌が血流に流入しやすい。肺門リンパ節腫大(しゅだい)が著しいと、小児ではときに気管支を圧迫して無気肺をおこすこともある。肺門リンパ節乾酪化巣が癒着した気管支壁を侵食して腔(くう)内に穿孔(せんこう)し、乾酪物質の吸引による結核性肺炎がおこることもある。かつては小児期や思春期の疾患とされていた肺門リンパ節結核が、初感染年齢の高齢化とともに成人にもみられるようになったので、注意を要する。治療は肺結核に準ずる。
[山口智道]
…X線写真ではリンパ節病巣だけが写ることが多いが,原発巣が大きいと両方が対になって写り,これを初期変化群と呼んでいる。リンパ節病巣だけが写るものは肺門リンパ節結核といい,小児結核のなかで最も多い。無症状のものが少なくないが,不定の症状(咳,食欲不振,発熱,顔色不良など)をあらわすものが多い。…
…家族内感染のような乳幼児の濃厚感染例に多くみられる。肺門リンパ節結核は一つの病型で,肺門リンパ節が腫大して起こる。自覚症状は軽く,ほとんど無自覚のこともある。…
※「肺門リンパ節結核」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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