改訂新版 世界大百科事典 「胃X線検査」の意味・わかりやすい解説
胃X線検査 (いエックスせんけんさ)
胃の食道入口部から十二指腸までの,主として胃の病変の有無を調べるX線検査roentgenography。現在おもに用いられているのは,充盈(じゆうえい)法,粘膜法,二重造影法および圧迫法である。これらの撮影法の利点を生かし欠点を補いながら胃の全体的な病変の有無を明らかにし,もし病変があればその病変形態を詳細に描出するわけである。
充盈法
胃を十分に伸展させる必要があり,一般に造影剤は硫酸バリウム(80~100%)を200~300ml使用する。胃の全体的な形,変形の有無,辺縁の状態などから病変の存在を推定する手がかりを与えてくれる。しかし充盈像だけでは中央部の病変は造影剤に隠れて現れない。充盈像だけでは病変の広がりが明確にできないし,微細な病変は診断が困難である。
粘膜法
少量の造影剤によって粘膜ひだの状態を観察する方法である。しかし微細な病変の診断は困難である。
二重造影法
一般に行われている背臥位二重造影法のほかに,腹臥位二重造影法や立位,半立位や右側臥位に近い第2斜位二重造影法がある。この方法の特徴は,体位の変換によって胃壁に付着している造影剤と空気によって胃内を二重に造影する方法である。したがって,ゾンデによって空気の注入または発泡剤によって気体を発生させ,必要にして十分に胃壁を伸展させることがたいせつである。二重造影法の利点は,体位の変換によって造影剤の胃粘膜面への付着をよくすること,病変の部位に適合した体位をとることによって陥凹部に造影剤がたまり,隆起した部分は造影剤を押しのけて凹凸の状態が明りょうに描出することにある。腹臥位二重造影法は,前壁粘膜法では正確な胃前壁病変の描写が得られないので,二重造影法で微細な病変による変化を知るために行われる。30~50mlの造影剤を与えた後にゾンデを使用して300ml以上の空気を注入して頭低位にすると,幽門から胃角にかけての二重造影像が得られる。さらに胃体部と穹窿(きゆうりゆう)部にかけては100~200mlの造影剤を与え200~300ml以上の空気を注入して,目的部位を柔らかい圧迫帯で圧迫すると,その部分の前壁二重造影像が得られる。
圧迫法
重要でありながら技術的な差の多い検査法である。圧迫することによって造影剤の層を薄くして,胃内面の陥凹や隆起と造影剤のX線吸収の差を利用して微細な病変を現すことができる。本法はとくに隆起性病変の検査にすぐれた方法である。現在のX線診断は小さな胃潰瘍とか微小早期胃癌のある種のものはX線検査およびX線診断では明りょうに描写されているにもかかわらず,手術によって胃漿膜からは病変部を確認できず,切開して胃壁を露出して初めて病変を確認したり,病理組織標本で確診に結びつく場合が多くなった。これほどに胃X線検査およびX線診断の技術は進歩している。これは同時にX線装置の進歩と相まってきたものといえよう。
執筆者:大塚 幸雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報