シダ植物において、胞子嚢が数個ないし多数が集合したものをいい、胞子葉の下面(表面生)または縁辺(縁辺生)に生じる。胞子嚢群がつく部分を胞子嚢托(たく)receptaculeという。胞子嚢群が生じる位置は葉脈との関係で、頂生(葉脈の先端)、脈上生(葉脈の中途)、合点生(葉脈の分岐部)とに区別される。胞子嚢群は、多くの場合、それぞれが独立して生じるが、隣り合う二つの胞子嚢群が癒合したもの(エダウチホングウシダなど)や多数が癒合して一塊をなすもの(ワラビなど)もある。また葉脈とは無関係に、胞子葉の裏面全体に胞子嚢群を生じるものもある(アツイタ、ミミモチシダなど)。胞子嚢群は、胞子が成熟するまでの間は、さまざまな方法で保護されている。多くの場合、包膜(膜状や鱗片(りんぺん)状のもので、胞子嚢托およびその付近の表皮細胞から形成される)が若い胞子嚢群を覆っている。包膜は形、大きさ、色などが変化に富むため、シダを分類する形質の一つとして用いられる。胞子嚢に混じって生じる側糸(細長い毛、または糸状体)は、ノキシノブ、シシランなどにみられる。偽包膜は、葉縁が折れ曲がって胞子嚢群を保護するもので、ワラビ、ハコネシダ、シシランなどにみられる。
[安田啓祐]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…このうち,小葉性のものと大葉性のものは異なった系統群に属しており,大葉性のもののうち,真囊性のものには系統的につながりの認められないリュウビンタイの類とハナヤスリの類がある。薄囊シダ類のうちには,一つの胞子囊群(ソーラスsorus)中の胞子がすべて同時に成熟するもの(斉熟),胞子囊托の基部から上部に向けて順番に成熟していくもの(順熟),それに一つのソーラスの中にさまざまの程度に成熟した胞子が混在するもの(混熟)の三つの型があり,この順に進化してきたものである。また,ソーラスの起源が,もともと葉縁である脈端にあるもの(縁生類)と,脈の背面につくもの(面生類)とは系統的に異なっている。…
※「胞子嚢群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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