ハコネシダ(その他表記)Adiantum monochlamys Eaton

改訂新版 世界大百科事典 「ハコネシダ」の意味・わかりやすい解説

ハコネシダ (箱根羊歯)
Adiantum monochlamys Eaton

ホウライシダ科の常緑多年生シダ植物。通常岩上に着生し,しばしば群落をつくる。根茎は短く匍匐(ほふく)し,相接して葉を出す。葉身は3~4回羽状に分岐し,葉柄赤褐色で,漆塗のような光沢がある。葉は長三角形で,大きなものは長さ30cmを超える。小葉は基部が広いくさび形で,うすい紙質胞子囊群は1小葉あたり1~2個,頂縁の深い凹みにつき,偽包膜とよばれる折れ返った葉片で包まれる。日本の本州以南と,朝鮮半島南部,台湾に分布している。中央構造線以南の堅い岩質の地帯に多く,とくに石灰岩地帯では群生することがあり,花コウ岩地帯にも時に見られる。神奈川県箱根で採集されたものに学名がつけられたところから和名がついた。アジアンタムの仲間でありながら栽培困難なシダで,愛好家の間では珍種として知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハコネシダ」の意味・わかりやすい解説

ハコネシダ
はこねしだ / 箱根羊歯
[学] Adiantum monochlamys Eat.

イノモトソウ科の常緑性シダ。短く匍匐(ほふく)する根茎から長さ15センチメートルほどの葉を出す。葉は近縁のホウライシダに似ており、扇状倒卵形の羽片となる。青森県を除く東北地方以南の山地林下の岩土に着生する。漢方では石長生(せきちょうせい)といい、利尿解熱駆虫寄生虫による皮膚病治療などに使われる。『万葉集』巻14で「足柄(あしがら)の 箱根の嶺(ね)ろの にこ草(ぐさ)の 花つ妻なれや 紐(ひも)解かず寝む」と詠まれたにこ草とは、このシダともいわれる。

[栗田子郎]

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百科事典マイペディア 「ハコネシダ」の意味・わかりやすい解説

ハコネシダ

ハコネソウとも。ホウライシダ科の常緑シダ。本州中部〜九州に分布し,岩の間などにはえる。葉は長さ30〜60cm,まばらに二叉(ふたまた)状の複葉となり,葉柄・中軸などは細い針金状,紫色で光沢がある。小羽片は倒卵状扇形で,先端の中央部は折れ返り胞子嚢群を隠す。茎,枝を玉箒(たまぼうき)とする。
→関連項目アジアンタム

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハコネシダ」の意味・わかりやすい解説

ハコネシダ(箱根羊歯)
ハコネシダ
Adiantum monochlamys

ワラビ科の常緑性シダ植物で,ハコネソウ,イチョウシノブなどともいう。日本の暖地,朝鮮南部,台湾,中国大陸に分布する。山地のあまり陰湿でない地上や岩上に生える。根茎は短く匍匐あるいは斜上し,葉柄基部とともに黒褐色の細い鱗片を密につける。葉は長さ 40cm前後に達し羽状複葉で,葉身は3~4回羽状に分れ,裂片は倒三角状卵形。葉柄は紫褐色または赤褐色で光沢があり長い。胞子嚢群は小羽片の先端部に普通1個だけつく。胞子は四面体型。

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