脂肪変性(読み)しぼうへんせい

精選版 日本国語大辞典 「脂肪変性」の意味・読み・例文・類語

しぼう‐へんせいシバウ‥【脂肪変性】

  1. 〘 名詞 〙 主として肝臓腎臓筋肉血管壁などの臓器組織細胞が変化し、病的に脂肪が現われる現象

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「脂肪変性」の意味・わかりやすい解説

脂肪変性
しぼうへんせい

生体内の脂肪物質が、病的に多量に、あるいは異なる場所に出現することをいう。生体の組織や細胞が正常の機能や形態を障害されて生ずる、いわば受け身の病変を、病理学的には退行性病変と一括し、これには変性、萎縮(いしゅく)および壊死(えし)という病変も包含される。また、このような病変は、細胞や組織の代謝障害によって生ずるので代謝障害と総括されることもある。退行性病変のなかの変性とは、生体の機能の減退とか機能の異常とかに基づいて、細胞・組織内に生理的にはまったく存在しない物質、あるいは生理的に存在する物質でも、正常とは異なった場所、ないし異常な量として認められる状態を意味し、その物質によって、変性は、タンパク質変性、脂肪変性、グリコーゲン変性、カルシウム変性、結晶体変性、色素変性に分類される。したがって、脂肪変性とは、生体内の脂肪物質が生理的に存在する場所でも異常なほど多量に、または、正常とは異なる場所に認められることとなる。また医学的には、脂肪化、脂肪浸潤ということばも、ほぼ同意語として用いられる場合もある。しかし、生体内の脂肪物質は、中性脂肪、胆固(たんこ)素(コレステロール)脂肪、リン脂質糖脂質と化学的に分類されているので、脂肪変性も脂肪そのものの種類により、それぞれ異なった臓器・組織に、あるいは種々の病変として多様な状態で認められる。

 中性脂肪は、肝臓の働きによって大部分貯蔵脂肪の形で存在するものであるが、これが全身的な中性脂肪の増加となると脂肪過多症とよばれる。また、皮下、腸間膜、心外膜などの脂肪組織の増加は脂肪症とよばれる。中性脂肪による変性が好発する臓器は、肝臓、腎臓(じんぞう)、心筋で、とくに肝臓では、組織単位である肝小葉に出現する状況によって、周辺性、中心性、びまん性脂肪変性に分類する習慣がある。また、結核性病変や脳軟化症の病変周辺では、壊死によって遊離された中性脂肪を、食細胞が貪食(どんしょく)摂取して、細胞質に微細な脂肪顆粒(かりゅう)が充満して認められるので脂肪顆粒細胞とよばれる。コレステロール脂肪変性の代表は、動脈硬化症の特徴である動脈内膜の粥腫(じゅくしゅ)(アテローム)である。さらにリン脂質変性としてのニーマン‐ピックNiemann-Pick病、糖脂質変性としてのゴーシェGaucher病、コレステロール脂肪変性の一種としてのハンド‐シュルレル‐クリスチャンHand-Schüller-Christian病など特殊な疾患が知られている。これらは脂質の代謝異常による脾臓(ひぞう)、リンパ節、肝臓などの網内系組織におけるそれぞれの脂質の蓄積を主体とする疾患群で、リポイド症あるいは類脂質蓄積症と総括されている。

[渡辺 裕]

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世界大百科事典(旧版)内の脂肪変性の言及

【変性】より

…変性は出現する物質によって分類されるが,物質の化学的性質の不明のときは単に形態的特徴から分類される。糖原変性(グリコーゲン蓄積症の肝臓,心臓),脂肪変性(リン中毒の脂肪肝,リピドーシスの肝臓,脾臓,神経組織),石灰変性の名は前者に従ったものであり,空胞変性,ガラス変性(実際はタンパク質顆粒)は後者に従ったものである。細胞質の中に顆粒状物質が現れて細胞や組織が濁って見えるものは混濁腫張と呼ばれるが,これもタンパク変性の一種である。…

※「脂肪変性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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