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糖脂質 とうししつglycolipid

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

糖脂質
とうししつ
glycolipid

複合脂質の一種。グリコリピドともいう。リンを含まず,ガラクトースやアミノ成分としている。加水分解によって,脂肪酸,グリセリン,糖を与えるグリコ糖脂質と,脂肪酸,スフィンゴシン (または類似の塩基) ,糖を与えるスフィンゴ糖脂質 (セレブロンド) などがある。グリコ糖脂質の糖部分にスルホン酸基が結合したり,硫酸エステルになったりしたスルホリピドもこれに属する。いずれもエーテルに可溶,アセトンに不溶。また水にコロイド状に溶けて界面活性を示し,生理的意義が重要視されているものが多い。

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百科事典マイペディアの解説

糖脂質【とうししつ】

糖を構成分としてもつ複合脂質,グリコリピドともいう。一般に非晶質の白色粉末。エーテル,クロロホルムなどに難溶な点が他の脂質と異なる。糖とグリセリンとのエーテル結合を含むグリセロ糖脂質と,糖とスフィンゴシンとのグリコシド結合を含むスフィンゴ糖脂質に大別される。
→関連項目脂質炭水化物

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栄養・生化学辞典の解説

糖脂質

 分子内に糖と脂溶性の基の両方を含む物質の総称.主なものでは,スフィンゴ糖脂質は脂溶性基がセラミドであるもの,グリセロ糖脂質はアシルもしくはアルキルグリセロールであるもの.

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世界大百科事典 第2版の解説

とうししつ【糖脂質 glycolipid】

糖と脂質が共有結合した物質の総称で,グリコリピドともいう。その代表例はスフィンゴ糖脂質であり,これはスフィンゴシン(図1)と脂肪酸が結合したものにさらに糖が結合したものである。スフィンゴ糖脂質は動物細胞の細胞膜に組み込まれて存在し,糖鎖は細胞の外側へと配向している。スフィンゴ糖脂質の構成糖としては,ガラクトース,グルコース,N‐アセチルガラクトサミン,N‐アセチルグルコサミン,フコース,シアル酸が知られている。

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大辞林 第三版の解説

とうししつ【糖脂質】

広く動植物組織中に存在する複合脂質の一種。脂肪酸または脂肪族アルコールと糖が結合した構造を基本構造とする化合物。グリコリピド。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

糖脂質
とうししつ
glycolipid

生体の脂質のうち構成成分として糖が結合し、かつリン酸基のない複合脂質の総称で、グリコリピドともいう。糖の種類や数、アシル基(脂肪酸残基)の種類、硫酸基の有無などにより多くの分子種があるが、疎水性部分の構造によりグリセロ糖脂質とスフィンゴ糖脂質とに大別される。
 糖脂質の研究は、1874年ツディクムJ. L. W. Thudichum(1829―1901)による脳のセレブロシド(代表的スフィンゴ糖脂質)分離に始まった。その後、多様な糖脂質が脳に限らず少量ながら動物の各臓器や植物にも存在することがわかり、それらの分子構造や代謝経路が解明される過程で、山川民夫(1921― )をはじめとする日本の生化学者の貢献も大きかった。
 糖脂質は生体組織中の微量成分で、その役割は核酸やタンパク質のようには判然とせず生化学研究の対象物質としては脇役であった。しかし1980年代からの分析技術の向上、モノクローナル抗体の利用、糖鎖の合成技術の開発などにより、微量な糖脂質の構造や生体組織・細胞での分布が詳細に解明されるようになり、細胞と細胞の識別、接着、外来物質の認識と応答(シグナル伝達)、増殖と組織の分化の制御など、生命現象に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。糖分子がつながったもの(糖鎖)の構造は核酸の塩基とタンパク質のアミノ酸に次いで第三の情報配列といわれるようになった。[大川いづみ]

グリセロ糖脂質

グリセロ糖脂質は、ジアシルグリセリドの一端に1~4個の糖がつながったもので、2個のアシル基は一般中性脂肪のものと同類で、糖はガラクトース、フコースが多く、硫酸化したものもある。1930年代より研究され、植物や微生物に広く分布するほか、動物でも精巣などに存在し、癌(がん)細胞だけがつくる抗原のなかにグリセロ糖脂質もあることがわかってきた。セミノリピドとよばれる硫酸化したグリセロ糖脂質の一種は精母細胞で合成され、それ以降の胚(はい)細胞に発現しているが、これらの物質の生物学的役割は今後の研究課題である。[大川いづみ]

スフィンゴ糖脂質

スフィンゴ糖脂質の構造はさらに複雑、多様であるが、脂肪酸と同様の疎水性長鎖で一端にヒドロキシ基とアミノ基をもつスフィンゴシン塩基1分子に炭素数24などの特殊な長い脂肪酸がアミド結合したセラミドに、さらに1ないし数個の糖が結合したものと要約できる。代表例は脳に多いセレブロシドやガングリオシド(神経節ガングリオンより命名)である。
 スフィンゴ糖脂質にグリコシド結合している糖はガラクトース、グルコース、シアル酸などの7種類が知られているが、その配列はさまざまで、長いものは数十個の糖分子がつながったものもあり、2000年時点で400種類以上のスフィンゴ糖脂質が知られている。神経繊維の鞘(さや)の部分に多く存在するスルファチドなど糖に硫酸が付いたものもあり、シアル酸をもつ一群はとくにガングリオシドまたはムコ脂質とよばれる。
 スフィンゴ糖脂質はすべての脊椎(せきつい)動物の細胞の表層や細胞内の膜構造に疎水性部分を埋め込み、糖鎖は外側に向いて存在する。細菌性毒素やウイルス、インターフェロンの受容体(作用部位)ともなる。疎水性のセラミドが小胞体で合成され、ゴルジ体で糖転位酵素がこれに一つずつ糖を結合する。糖脂質は細胞内と表面の細胞膜の間で循環移動し、リソゾーム内で糖分子をはずす酵素によって分解される。細胞表層でも一様に漂っているのでなく、外界を認識し反応する機能が集中したラフト(いかだの意)とよばれる部分に集中して存在すると考えられるようになった。特定の糖鎖を検出するモノクローナル抗体を用いるなどして、ガングリオシドが脳組織の特定の部位に特定の時期に発現することなどが示され、生理的機能に関心がもたれている。癌の転移にガングリオシドが必要であるとか、ニューロンが脱落する変性疾患の代表としてのアルツハイマー病に、ガングリオシドが有効に作用するのではないかとの研究も行われている。
 なお、ヒトのスフィンゴ糖脂質代謝異常症という疾患がある。代表例のゴーシェGaucher病はグルコシルセラミド蓄積症(グルコセレブロシド蓄積症)ともいい、分解酵素の欠損により各臓器にグルコシルセラミドが蓄積する常染色体性劣性遺伝疾患で、リピドーシス(脂質蓄積症)のうちもっとも頻度が高い。テイ‐ザックスTay-Sachs病も遺伝性脂質代謝異常症で、分解酵素の異常によってガングリオシドが主として脳神経に蓄積する。[大川いづみ]
『池北雅彦他著『糖鎖学概論』(1997・丸善) ▽小倉治夫監修『複合糖質の化学』(2000・シーエムシー) ▽日本化学会編『糖鎖分子の設計と生理機能』(2001・学会出版センター)』

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