脱ろう(読み)だつろう(その他表記)dewaxing

日本大百科全書(ニッポニカ) 「脱ろう」の意味・わかりやすい解説

脱ろう
だつろう
dewaxing

潤滑油や灯・軽油のろう分を除去し品質の向上を図ること。潤滑油などにろう分(ワックス分、直鎖状パラフィンおよび短く数少ない側鎖をもつ分枝状パラフィン)が含まれていると、固化しやすく流動性が悪くなる。このろう分を除去するために行われる。1980年代からは溶剤法と選択的水素化分解法および選択的異性化法が行われている。溶剤法には、メチルエチルケトン(MEK=methyl ethyl ketone)とトルエンの混合溶剤を用いるMEK法、液化プロパンを用いるプロパン法がある。ろう分はこれらの溶剤に溶解しにくいため、原料と溶剤との混合液を冷却すると、ろう分は固化析出するので、これを濾過(ろか)分離する。この方法は軽油から潤滑油まで適用できる。また尿素がノルマル(直鎖状)パラフィンと選択的に付加物をつくって沈殿する性質を利用した尿素法があり、軽油および絶縁油に適用されている。選択的水素化分解法は、分子形状選択性を有するゼオライト(ZSM-5あるいはモルデナイト。国際ゼオライト協会International Zeolite Association=IZAによる結晶構造名は、それぞれMFIとMOR。ZSM-5=Zeolite of Socony Mobil-5の略)に金属を分散担持(保持)した触媒を用いて、ろう分だけを選択的に水素化分解する方法で、軽油から潤滑油まで適用できる。2000年代からは、同様の触媒を用い、より温和な反応条件下でノルマルパラフィンを分枝状パラフィンへと異性化し、原料の損失を抑えながら粘度を低下させる選択的異性化法が実用化されている。

[八嶋建明]

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化学辞典 第2版 「脱ろう」の解説

脱ろう
ダツロウ
dewaxing

ディーゼル燃料(軽油)や潤滑油原料中に含まれているろう分を除去することをいう.ディーゼル燃料や潤滑油中にろう分が含まれていると,流動点が高くなったり,粘度指数が低くなり性能が低下する.脱ろう法としては,水素化脱ろう法,プレス脱ろう法,溶剤脱ろう法(プロパン脱ろう法,バリソル法,BK(ベンゼンケトン)脱ろう法),付加物脱ろう法(尿素付加物法)などがある.また分離されたろう分を精製したものはパラフィンろうである.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「脱ろう」の意味・わかりやすい解説

脱ろう
だつろう
dewaxing

潤滑油原料からろう分を分離すること。減圧蒸留および溶剤脱瀝から得られた潤滑油原料は,ろう分を含んでいるため流動点が高く,そのままでは潤滑油として使用できないので,これを除去する必要から行われる。脱ろう法としては溶剤脱ろう法が一般に行われている。これは,ろう分を固化結晶させる溶剤 (メチルエチルケトンやアセトン) と油分を溶解する溶剤 (ベンゼンやトルエン) を混合した混合溶剤を使用し,固化したろう分をろ過して分離する方法である。

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