腰麻痺(読み)ようまひ(その他表記)cerebrospinal setariosis

改訂新版 世界大百科事典 「腰麻痺」の意味・わかりやすい解説

腰麻痺 (ようまひ)
cerebrospinal setariosis

ウマヤギヒツジにみられる病気ウシに寄生するセタリア属Setariaの指状糸状虫によって起こる。セタリア属の糸状虫は,多くの種類の家畜腹腔内に見受けられるが,ウシの指状糸状虫は他種の動物の中枢神経系や目に侵入して,麻痺失明の原因となる。この指状糸状虫は長さ5~10cmの糸状の細い虫で,本来ウシの腹腔内に寄生しているが,この虫のミクロフィラリアは感染動物の末梢血中から,吸血性のカによって吸われ,ウシ以外の他の動物に伝播(でんぱ)する。それらの動物では中枢神経に侵入して,巣状の脳脊髄軟化が起こる。そのため急性ないしは亜急性の麻痺がみられ,四肢におよぶと数日内に死亡することがある。晩夏か秋に好発する。予防は,媒介するカを防除すること。本病が発症したものでは,全身性の駆虫剤を反復して投与するか,好発時期にあらかじめ毎日投与することが望まれる。発病初期であれば,加療によって多少腰のふらつきは残るが生命は確保できる。
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百科事典マイペディア 「腰麻痺」の意味・わかりやすい解説

腰麻痺【ようまひ】

家畜病の一つ。ヒツジ,ヤギ,ウマに発生。ウシの腹腔に寄生するフィラリアがカの媒介によってヒツジなどに感染し,脳や脊髄に侵入して組織を破壊することによって起こる。おもに後躯の運動麻痺を起こして起立不能となり,また種々の知覚神経症状を示す。二次的に肺炎敗血症などを起こして死ぬことが多い。完全な治療法はなく,カの駆除とウシのフィラリアの駆虫により予防する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「腰麻痺」の意味・わかりやすい解説

腰麻痺
ようまひ
haunch paralysis

やぎ,羊,馬などの家畜の病気。脳脊髄糸状虫症。腰が弱くなり,後肢だけが不自由になるものが多い。馬では放牧病の一種として知られ,おもに発育中の幼駒に発生する。糸状虫の幼虫が脊髄内に侵入し,脊髄を傷つけるので運動が不自由になる。治療・予防はジエチルカルバマジンなどの投与と媒介虫 (蚊) の刺咬防止。しかし北海道では,放牧中シダ類の一種の中毒症として発生することがあるともいわれ,原因は一様ではない。

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