四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「腹部単純X線撮影検査」の解説
腹部単純X線撮影検査
腹痛などの腹部の異常の原因を調べるために行う最初の検査です。妊娠中やその可能性のある人には、この検査は行いません。
腹痛時の重要な検査
腹痛は、内臓の病気では最も重要な症状のひとつです。腹痛があるとき、まず最初に必ず行うのが、この検査です。
X線は空気の中は素通り(透過)してネガを感光させるため、フィルムには黒く写ります。一方、皮膚、脂肪、骨、結石などは、それぞれX線の透過性が異なるため、区別することができます。
この検査では、イレウス(腸閉塞)、腸管
イレウスでは特有のガス像
腸がつまってしまうイレウスでは、腸の
腸管穿孔があると、腸管内の空気が腹腔内に漏れ出し、横隔膜の下に三日月状のガス像を示します。腹痛があり、このガス像を認めたら大至急、手術が必要です。
リンパ節は軟らかい組織でX線はほとんど透過してしまうため、〈単純撮影〉では写りませんが、カルシウムが沈着すると、白く丸く写ります(リンパ節の石灰化)。結石もカルシウムが沈着したときのみ、〈単純撮影〉で診断できます。
■イレウス(腸閉塞)
写真に向かって右下に、黒い手の指のような像がみえる。これがイレウスに特有な腸管ガス像(ニボー像)。
2~3分で終了、人体には影響ない
立位正面像とあお向けの像、ときに立位側面像も撮影します。
まず検査着に着替え、X線フィルムを前に腹部を接して立ちます。両手は、前方にあるフィルムのカセットを抱くようにし、しっかり息を止めたところで背中側から撮ります。次に、検査台にあお向けに寝て息を止め、上から撮ります。
X線の照射は0.2秒くらいで、人体には影響はなく、苦痛もありません。撮影は着替えを含め、2~3分で終了します。
妊娠している人、その可能性のある人は行わない
検査当日の飲食は、普通にとってかまいません。
繰り返しの検査もできますが、妊娠している人、またその可能性のある人は、腹部に直接X線を当てることで胎児に影響があるといけないので、この検査は行いません。
疑われるおもな病気の追加検査は
◆胆石→腹部超音波、腹部CT、胆嚢胆管造影など
◆腎・尿管結石→検尿、腹部超音波、腹部CT、腎盂造影など
◆膵石(膵石炭化)→腹部超音波、腹部CT、腹部MRI(MRCP)など
医師が使う一般用語
「ふくたん」=腹部単純X線撮影の略「腹単」から
出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報