膀胱腫瘍(読み)ぼうこうしゅよう

精選版 日本国語大辞典 「膀胱腫瘍」の意味・読み・例文・類語

ぼうこう‐しゅようバウクヮウシュヤウ【膀胱腫瘍】

  1. 〘 名詞 〙 膀胱内にできた腫瘍。多く血尿がでる。良性腫瘍として乳頭腫悪性腫瘍として癌腫がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「膀胱腫瘍」の意味・わかりやすい解説

膀胱腫瘍
ぼうこうしゅよう

膀胱の腫瘍のうち95%は膀胱の粘膜から発生する移行上皮癌(がん)である。発生率の男女比は4対1で男性に断然多い。明らかな原因として、喫煙と化学物質の被曝(ひばく)、芳香族アミンのベンチジン、β‐ナフチルアミンなどがある。ほかに明らかな原因は証明されていないが、食品、薬品などのうちに発生の要因と考えられるものがある。アフリカのナイル川流域の住民でビルハルツ住血吸虫症にかかっている人では、膀胱に扁平(へんぺい)上皮癌が発生する。

 膀胱の移行上皮癌は、細胞の悪性度によって1度から4度までに分類されるが、一方、腫瘍の発育の形状から病期別に分類され、粘膜内癌を0またはCIS、有茎の乳頭状腫瘍はT1、筋層または中間層まで浸潤したものはT2、さらに深く浸潤したものはT3、周囲の臓器に及んでいるものはT4、リンパ節または他臓器に遠隔転移を有するものはN+またはM+とされる。

 70%の腫瘍は膀胱の三角部とその周辺に発生する。まれに頂部に発生するものは腺癌(せんがん)で、胎生期の尿膜管遺残組織からおこり、きわめて悪性である。大部分の移行上皮癌では、一般に乳頭状で有茎性の腫瘍は予後良好で、広基性浸潤性癌は早期に遠隔転移をおこす。転移組織としては、所属リンパ節のほか、肝、骨、肺が多い。

 臨床症状は、まず肉眼的血尿が重要で、間欠的にみられるが、膀胱炎のような頻尿や排尿時の痛みは伴わないのが特徴である。

 臨床検査では血尿の証明以外に、尿の細胞診で癌細胞を証明する。画像診断では病期を決定するため、CTスキャン、超音波エコーをはじめ、静脈性腎盂(じんう)造影(IVP)、膀胱造影などが行われる。もっとも直接的な診断法は内視鏡検査で、同時に生検を行うが、乳頭状腫瘍は診断を兼ねて切除が容易に行える。

 治療としては、表在性乳頭状腫瘍には内視鏡による経尿道的切除術(TURBT)が適応となる。しかし再発しやすいため予防目的でBCGマイトマイシンCなどの抗癌剤の定期的膀胱内注入が行われる。浸潤癌では膀胱全摘、リンパ節をきれいに切除するリンパ節廓清(かくせい)が必要で、これに伴って尿路変更術、腸を用いた新膀胱の形成による尿貯留層の造設術などが行われるが、多くは下腹部に集尿袋の貼布(ちょうふ)を要する回腸導管形成術が行われる。すでに遠隔転移をしている症例では、尿路再建、またはシスプラチンを含む多剤抗癌化学療法が行われる。

田崎 寛]

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内科学 第10版 「膀胱腫瘍」の解説

膀胱腫瘍(腎・尿路腫瘍)

(3)膀胱腫瘍(bladder tumor)
分類
 病理組織型で90%以上が移行上皮癌である.悪性度の低い乳頭状・有茎性腫瘍から非乳頭状・浸潤性のものまで多様性があること,多発・再発する傾向があること,再発は繰り返していくうちに悪性化も10~15%にみられる特徴がある.その他,扁平上皮癌が5~10%,腺癌が1~2%にみられる.
原因・病因
 芳香族アミン(ベンチジン,β-ナフチラミン,4-アミノビフェニール)がヒト膀胱癌を引き起こす.喫煙もリスクを4~5倍高める.
頻度
 泌尿器科領域では前立腺癌についで多い癌である. 男女比は約4:1と男性に多い.年齢別頻度では60~70歳代にピークがあるが,若年者にもみられる.初診時60~70%が表在癌(筋層非浸潤癌)である.
臨床症状
 無症候性肉眼的血尿が最も多い初発症状である.凝血塊をみることがあるが,排尿痛や腹痛などの自覚症状がないのが特徴である.膀胱上皮内癌(carcinoma in situ:CIS)では,頻尿,排尿痛などの膀胱刺激症状がある.
検査成績
 血尿はほぼ必発である.尿細胞診は高分化腫瘍では陰性のことも多い.膀胱上皮内癌では陽性率が高く有用である.
診断
 膀胱鏡検査による腫瘍の確認と生検による病理診断が確定診断となる.尿充満時の腹部超音波検査は膀胱内腔に突出する腫瘍ではきわめて有用である.排泄性尿路造影は上部尿路での腫瘍の存在の有無や水腎症などの膀胱腫瘍の上部尿路への影響の有無をみる.膀胱上皮内癌ではランダム生検が有用である.
鑑別診断
 血尿の原因となる膀胱炎,膀胱結石,前立腺肥大症などとの鑑別を要する.
治療・予後
 腫瘍が表在性であれば,経尿道的腫瘍切除術 (transurethral resection of bladder tumor:TUR-Bt)を行うが,50~60%は膀胱内再発を起こす.多発,再発を繰り返す場合は,マイトマイシンCやドキソルビシン系抗癌薬の膀胱内注入療法が行われる.膀胱上皮内癌や抗癌薬で再発するときにはBCGの膀胱内注入療法が行われる.pT1,ハイグレード(Gr3)症例については,セカンドTUR-Btが推奨されている. 筋層をこえる浸潤性膀胱癌では膀胱全摘除術と尿路変更・再建が基本となる.膀胱壁外浸潤,リンパ節転移や遠隔転移がある場合,シスプラチン,ゲムシタビンを中心とした多剤併用化学療法が行われる.
 表在癌であれば予後はよく,5年生存率は80%をこえる.浸潤癌や転移症例での予後は不良で,5年生存率は30~40%程度である.[山口雷藏・堀江重郎]

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百科事典マイペディア 「膀胱腫瘍」の意味・わかりやすい解説

膀胱腫瘍【ぼうこうしゅよう】

膀胱に生じる腫瘍。乳頭腫(パピローム)などの良性腫瘍もあるが,膀胱癌が大部分を占める。発生原因は未確定だが,特殊なものとしてアニリン系染料薬品(ベンジジン,β‐ナフチルアミンなど)を取り扱う工場労働者に多発するアニリン腫瘍がある。また乳頭腫はしばしば悪性化する。症状は一般に初期に血尿をみ,腫瘍の種類にもよるが,進行するに従って,排尿障害,疼痛(とうつう),尿混濁などをみる。診断は主として膀胱鏡による。治療は放射線治療,手術による部分切除または摘出。
→関連項目ストーマケア

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「膀胱腫瘍」の意味・わかりやすい解説

膀胱腫瘍
ぼうこうしゅよう
tumor of the urinary bladder

膀胱壁の各組織に生じる腫瘍で,95%以上が膀胱粘膜の上皮に生じる上皮性腫瘍。良性と悪性がある。良性は乳頭腫,悪性は癌が代表的である。どちらも血尿,疼痛によって発見されることが多いが,膀胱鏡によって診断は比較的容易である。前者に対しては,手術用膀胱鏡を用いた電気凝固法で満足すべき効果が得られる。後者に対しては一般の癌治療に準じる。

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世界大百科事典(旧版)内の膀胱腫瘍の言及

【膀胱癌】より

…膀胱粘膜上皮に発生する悪性腫瘍で,膀胱腫瘍の90%以上を占める。膀胱腫瘍には,このほかに悪性腫瘍である膀胱肉腫や良性の平滑筋腫などがあるが,きわめてまれである。…

※「膀胱腫瘍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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