臨床宗教師(読み)りんしょうしゅうきょうし

共同通信ニュース用語解説 「臨床宗教師」の解説

臨床宗教師

布教伝道目的とせず、被災地病院福祉施設などで人々の心のケアに当たる宗派を超えた宗教者。東日本大震災後の2012年、東北大(仙台市)で養成講座が始まった。現在、9機関で受講可能。18年からは専門教育課程を終えた宗教者を対象に、日本臨床宗教師会が資格を認定している。今年9月時点の資格保有者は計231人。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「臨床宗教師」の意味・わかりやすい解説

臨床宗教師
りんしょうしゅうきょうし

死期が迫った患者や遺族に対して、宗教や宗派にかかわらず、また布教伝道をすることもなく、公共性のある立場からの専門的な心のケアを行う宗教者。死への不安、生きる意味の喪失感や罪責感、愛する人を失った悲嘆など、それぞれの心の苦しみや痛みを理解し、和らげるための支援を行うことを目ざし、その人材育成の動きが始まっている。欧米では臨床にかかわる宗教者として、教会寺院などには属さず、病院や軍隊など人の生死に関係する場所で患者や遺族の心のケアに携わるチャプレンchaplainが活動している。臨床宗教師はこのチャプレンの日本版を目ざしている。

 国内での専門家育成の動きの発端となったのは、2011年(平成23)3月に起きた東日本大震災である。当時、宮城県下の2050の宗教法人が加盟する宮城県宗教法人連絡協議会が主体となり、「心の相談室」を設置、仙台仏教会や仙台キリスト教連合をはじめ、多くの宗教者や医療関係者、ボランティアが宗教宗派を超え、遺族のケアや相談にあたった。この「心の相談室」の活動を踏まえ、2012年度、東北大学文学部に地元の宗教関係者らの寄付を受けた実践宗教学寄付講座が設立された(設置期限は3年間)。人の死に関する宗教的な心のケアを扱う専門講座で、国立大学でこのような講座がもたれるのは初めての試みである。将来的には、臨床宗教師の資格制度創設を目ざしている。

[編集部]

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知恵蔵mini 「臨床宗教師」の解説

臨床宗教師

医療機関や福祉施設、被災地などで心のケアを行う宗教者のこと。欧米の病院で心のケアを行う宗教者を指す「チャプレン」に相当する存在として、宮城県で緩和ケアに携わっていた医師の岡部健(おかべ たけし)らによって提唱された。布教や伝道を目的とせず、また特定の宗教や宗派に偏らず、公共性のある立場からの専門的な宗教的ケアに取り組む。2011年の東日本大震災が発端となり、東北大学で宗教者を対象とする養成講座がはじまるなど、専門家育成に向けた動きが活発化した。18年には、一般社団法人日本臨床宗教師会が「認定臨床宗教師」の資格認定を開始した。

(2019-1-24)

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