日本大百科全書(ニッポニカ) 「臨界期」の意味・わかりやすい解説
臨界期
りんかいき
critical period
敏感期ともいう。元来は植物発生上の用語。発芽後、ある一定期間の日光照射は植物の成長に大きな効果があるが、その期間を外すと激減するなどの現象をさしていた。現在は拡張されて、人間や動物の行動発生の過程において、潜在している機能が具現化、変容、抑制されるうえで、環境要因の作用、とくに特定刺激の提示に高い感受性を示す、限られた発生期間をいう。カモ、ガチョウなど大形離巣性鳥類を人工孵化(ふか)後、生後何時間内かに動く物体に接触させると、以後その物体を親として追尾するようになる刷り込み(刻印づけ)は有名な例である。人間では、たとえばアメリカの神経生理学者レネバーグEric Lenneberg(1921―1975)は言語獲得の臨界期は12~13歳までに限られるとする。モンテッソリは、幼児期までが人格教育や認知的学習の敏感期をなすという。
[藤永 保]
『古川真人・藤田宗和著『新・教育心理学』(1994・尚学社)』▽『ジーン・エイチソン著、成瀬武史訳『やさしい心理言語学 20週講義概要』(1994・南雲堂)』▽『生田哲著『脳の研究――頭によいこと、わるいこと』(2002・講談社)』▽『三谷恵一著『子どもの心理学』(2002・ブレーン出版)』