自家移植と同種移植の選択、同種移植におけるドナー選択

  • 自家移植と同種移植の選択、同種移植におけるドナー選択(造血幹細胞移植術)

内科学 第10版の解説

(1)自家移植と同種移植の選択
 自家移植において期待できる抗腫瘍効果は,移植前処置の大量抗癌薬や全身放射線照射による効果のみである.また,採取した移植片に腫瘍細胞が混入する可能性があり,この混入腫瘍細胞が移植後再発の原因となる可能性がある.一方,同種移植においては移植片に腫瘍細胞が混入する可能性がないのみならず,ドナーの免疫担当細胞による抗腫瘍効果(GVL(graft versus leukemia)効果)が期待できる.しかし,同種移植後は移植片対宿主病(GVHD(graft-versus-host disease))や感染症などによる移植関連死亡率が高くなる.すなわち,自家移植と同種移植の選択は,疾患や病期などに応じて,同種移植による抗腫瘍効果の増強と合併症や移植関連死亡率の増加のバランスを考えて選択しなければならない.一般的には白血病,骨髄異形成症候群,再生不良性貧血では同種移植が,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫では自家移植がより多く行われている(図14-8-4).
(2)HLA
 HLAはhuman leukocyte antigen(ヒト白血球抗原)の略称であり,ヒトの主要組織適合性複合体(major histocompatibility complex:MHC),すなわち,自己と非自己を認識する最も重要な抗原である.造血幹細胞移植においては,ドナーと患者の間にHLAの不適合があると,お互いにより強く非自己であると見なすことによって,移植片拒絶とGVHDの頻度が増加する. HLAを決定する遺伝子は6番染色体短腕p21.3に並んで存在し,ひとかたまり(ハプロタイプ)として遺伝する(まれに組み替えを生じることがある).主要な抗原としてはHLAクラスIに属するHLA-A,B,CとクラスⅡに属するDR,DQ,DPがあげられるが,造血幹細胞移植において特に重要なのは,HLA-A,B,DRである.それぞれ両親から遺伝した抗原を有するため,合計6個の抗原についてドナー候補者と患者間で比較する必要があるが,非血縁者間移植においてはHLA-Cの重要性も示されており,現在は骨髄バンクのコーディネーションでHLA-Cもルーチンに検査が行われるようになっている. HLAの検査としては血清学的検査(抗原型の判定)が古くから行われているが,この方法では検出できないHLAの差異が臨床的に重要性を有する場合があることがわかり,非血縁者間骨髄移植ではより精密な遺伝子レベルでの検査(アリル型の判定)が行われている(Petersdorf,2004).
(3)同種造血幹細胞移植におけるドナー選択
a.HLA適合血縁者間移植とHLA一抗原不適合血縁者間移植の比較
 HLA型が適合した血縁者(おもに同胞)は同種造血幹細胞移植に最も適したドナーであると考えられている.しかし,少子化の進む先進国においてそのようなドナーが得られる確率は30%程度にすぎない.一方,HLA適合血縁ドナーが得られない場合のドナーの選択肢は徐々に広がり,骨髄バンクを介した非血縁者間骨髄移植,HLA不適合血縁者間移植,非血縁者間臍帯血移植が候補としてあげられるようになった.
 HLA適合血縁者間移植とHLA一抗原不適合血縁者間移植の移植成績の大規模な比較として,日本造血細胞移植学会(JSHCT)に報告された血縁者間移植のデータを用いてHLAの一抗原不適合が血縁者間移植成績に及ぼす影響の検討が行われた(Kandaら,2003).グレードⅢ以上の急性GVHDの発症頻度は,一抗原不適合血縁者間移植では有意に増加した(図14-8-5A).一方,移植後の再発に関しては,進行期白血病では有意に再発率が低下したが,元来移植後再発の少ない病初期移植では再発率の低下はわずかであった(図14-8-5B).その結果,進行期移植においてはGVHDの増加による移植関連死亡率の増加と再発率の低下が相殺されて生存率はほぼ同等になるが,病初期移植においては再発率の低下がわずかであるため,生存率はHLA一抗原不適合の存在によって有意に低下するという結果となった(図18-4-5C).
b.HLA一抗原不適合血縁者間移植とHLA適合非血縁者間移植の比較
 次に重要になるのはHLA一抗原不適合血縁者間移植とHLA適合非血縁者間移植の比較である.前述のJSHCTデータの解析において,HLA一抗原不適合血縁者間移植とHLA適合非血縁者間移植を比較したところ,病初期白血病においても進行期白血病においても両者の成績はほぼ同等であった(Kandaら,2003).
 しかし,非血縁者間移植の場合,抗原型で適合していてもアリル型の不適合が存在することが多い.前述の研究は1991年から2000年に行われたものであり非血縁者間移植におけるアリルの適合度は検討されていなかったが,諫田らは2001年から2008年に行われた移植データを用いて再検討を行った.非血縁者間骨髄移植をA,B,C,DRB1のすべてのアリルが適合している移植に限定して比較したところ,HLA(GVHD方向)一抗原不適合血縁者間移植よりも有意にすぐれているという結果であった(図14-8-6)(Kandaら,2012).
c.非血縁者間臍帯血移植とHLA二抗原不適合血縁者間移植
 以上の結果から,HLA適合血縁者についで優先すべきドナーは,ドナーのコーディネートを待つ余裕があればHLA適合非血縁ドナーであるが,HLA一抗原不適合血縁ドナーも有力な候補となる.しかし,移植を必要としながらも,血縁者に一抗原不適合までのドナーが見つからず,日本国内のバンクでもドナーが得られない場合には,海外バンクドナーからの移植,HLA二抗原以上不適合血縁者間移植,非血縁者間臍帯血移植が候補として考えられる.海外バンクドナーからの移植は減少しているが,HLAが適合していれば国内のHLA適合非血縁者間移植とほぼ同等の成績が得られており,金銭的な障壁がなければ検討に値する.非血縁者間臍帯血移植はこれらにつぐ優先順位の選択肢ということになる.臍帯血移植では二抗原程度のHLA不適合があってもGVHDの頻度は許容範囲内であるが,生着不全の確率が高いこと,生着まで長期間を要することが問題点である.進行期造血器腫瘍に対してはHLA二抗原以上不適合血縁者間移植も行われているが,HLAの不適合による拒絶の増加とGVHDの増加が問題となる.[神田善伸]
■文献
Kanda Y, Chiba S, et al: Allogeneic hematopoietic stem cell transplantation from family members other than HLA-identical siblings over the last decade (1991-2000). Blood, 102: 1541-1547, 2003.
Kanda J, Saji H, et al : Related transplantation with HLA 1-antigen mismatch in the graft-versus-host direction and HLA 8/8-allele-matched unrelated transplantation: A nationwide retrospective study. Blood, 119: 2409-2416, 2012.
Petersdorf EW: HLA matching in allogeneic stem cell transplantation. Curr Opin Hematol, 11: 386-391, 2004.
 

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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