最新 心理学事典 「自律訓練法」の解説
じりつくんれんほう
自律訓練法
autogenic training
シュルツは,フォクトが治療的意義を見いだした中性的催眠トランス状態を,自分で得られるように工夫を重ね,1932年に『自律訓練法―集中性自己弛緩―』を公刊したのが,自律訓練法の始まりである。自律訓練法の標準練習は以下の6段階からなっている。
基本公式(安静練習)「気持ちがとても落ち着いている」
第1公式(四肢重感練習)「両腕・両脚が重い」
第2公式(四肢温感練習)「両腕・両脚が温かい」
第3公式(心臓調整練習)「心臓が自然に静かに規則正しく打っている」
第4公式(呼吸調整練習)「自然に楽に息をしている」
第5公式(腹部温感練習)「おなかが温かい」
第6公式(額の涼感練習)「額が心地良く涼しい」
標準練習は各公式を1週間から10日行ない,次の公式を付け加える。練習時は,受動的注意集中の仕方が重視される。標準練習の目標は,心身の内的弛緩を図り,これを通じて心身の再体制化,興奮沈静化への切り替えを達成することにある。標準練習に続いて,黙想練習,特定器官公式,意志訓練公式を行なう。黙想練習は,自己の内的体験を深化させるために,視覚イメージの系統的な発展を試みる。特定器官公式は,特定身体部位の生理的変化を図り,疾患や症状,問題を軽減させるためのものである。意志訓練公式は,特定の心理的な問題を克服するためのもので,目標により中和公式,強化公式,節制公式,逆説公式,実存公式などに分類される。その後,シュルツとともに自律訓練法の発展に努めたルーテLuthe,W.は,自律訓練法の臨床的,実験的研究結果を神経生理学的立場から,その治癒的メカニズムの理論構成を図り自律性解放や自律性除反応,自律性言語化などの概念を導入し,1969年に『自律訓練法Autogenic Therapy Ⅰ~Ⅵ』として体系化した。
わが国では,井村恒郎による自発性訓練法や笠松章助による自発性鍛錬などの名称で概略が紹介されていたが,1959年成瀬悟策が「Autogene(s) Training」の和訳を「自律訓練法」としてから今日の名称となった。1961年ころから自律訓練法の研究が盛んになり,わが国では医療にとどまらず心理臨床,教育,スポーツなどの領域で用いられた。そして1978年に池見酉次郎を中心に日本自律訓練学会が設立され今日に至っている。 →催眠
〔田中 新正〕
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