練習(読み)レンシュウ(その他表記)practice

翻訳|practice

デジタル大辞泉 「練習」の意味・読み・例文・類語

れん‐しゅう〔‐シフ〕【練習】

[名](スル)技能学問などが上達するように繰り返して習うこと。「英文タイプを練習する」「バッティング練習」「練習問題」
訓練[用法]
[類語]習練訓練特訓稽古けいこ温習おさらい演習下稽古したげいこらしトレーニングエクササイズリハーサルゼミナールフィールドワークレッスンゲネプロ寒稽古通し稽古舞台稽古立ち稽古稽古事鍛錬練磨練成修業修練教練試練

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精選版 日本国語大辞典 「練習」の意味・読み・例文・類語

れん‐しゅう‥シフ【練習】

  1. 〘 名詞 〙 学問や技芸などを繰り返し学習すること。また、一定の作業を反復して、その技術を身につけること。
    1. [初出の実例]「内々可習儀範侍、其間事可貴殿之教喩也」(出典:明衡往来(11C中か)下本)
    2. 「只堪能に練習して、座功をつむより外の稽古はあるべからず」(出典:連理秘抄(1349))
    3. [その他の文献]〔晉書‐胡母輔之伝〕

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改訂新版 世界大百科事典 「練習」の意味・わかりやすい解説

練習 (れんしゅう)
practice

学習を行うために繰り返し行う操作のこと。刺激stimulusと反応responseの結合に関して,1910年アメリカの心理学者E.L.ソーンダイクは二つの性質を見いだした。その一つは,ある刺激に対してある反応が起こるとき,それが繰り返されると刺激と反応の結合が強められるというもので,このとき繰り返される操作を練習と呼ぶ。また第2の性質は,これが繰り返されないときは刺激と反応の結合が弱められる。すなわち,練習しないときは刺激-反応の結合は弱められる,というものである。この二つの性質を〈ソーンダイクの運動の法則〉という。

練習が果たす学習の役割のメカニズムについては,必ずしも明確とはいいがたいが,脳内の神経細胞と神経細胞の接続部シナプスに,ある持続的な変化が生じていることが推測されている。たとえば,あるシナプスを繰り返し信号が通過すると,そのシナプスの信号の通過が一時期よくなる現象がよく知られており,とくにその効果が長く続くものをシナプス伝達長期増強と呼ぶ。学習のときの練習の効果が,この長期増強という形で保持されるのではないかと考えられている。

 練習に伴う変化の一例として知覚学習の例を挙げると,2点弁別閾(いき)すなわち皮膚上の点の弁別力の測定が挙げられる。皮膚の2点を触れ,それが一つに感じられるか二つに感じられるかの2点弁別閾を毎日調べる。すると,どの場所でも,長い間テストを続けると,この2点弁別閾が最初の半分かそれ以下に減少していくことが知られている。すなわち,2点間の識別性が練習により向上するのである。

 練習の効果がとくに重要なのは,技能学習のときである。すなわち,種々のスポーツ,技や,ピアノバイオリンの演奏などは同一の動作を反復することが重要である。この技能学習の神経機構に関して,小脳皮質が重要であることがわかりつつある。マーF.W.Marrによれば,技能学習は小脳皮質の学習神経回路によって行われると考えられ,操作を繰り返すたびに間違いやぎごちなさが少しずつ修正されるのは,小脳皮質のシナプスにそれが記憶されていくためであるという。実際に,小脳皮質の神経回路で繰り返し信号が通過することによってシナプスの伝達効率が変化する現象が見いだされている。この場合重要なことは,運動の結果を評価する信号が小脳皮質に入って,間違いの程度やぎごちなさの程度についての情報を与えることである。小脳皮質の神経回路には2種類の入力があることが知られるが,その1種類の入力が間違いの程度や運動の誤差に関する情報を伝え,これによってもう一種類の入力信号の伝達が可変性をもち,間違いやぎごちなさを修正する方向に逐次変化して運動学習が完成すると考えられている。

繰返しによる練習の役割については,心理学上,連合主義行動主義的立場とゲシュタルト派の心理学者の間で考え方に大きな差異があった。B.F.スキナーのように試行回数よりも強化回数を重視するものもいるが,連合主義では単なる反復が学習の成立に有効と考えている。たとえば,パブロフ型の自律神経系の条件づけ(ベル音と食餌を組み合わせる)では,これを繰り返し提示するだけで学習は成立する。これに対しゲシュタルト学派では,単なる反復だけでは不十分であると考える。すなわち無意味な繰返しは有効ではなく,重要なのは強化される回数で,試行回数だけを繰り返しても有効でないと考える。

 一方,神経生理学的な立場からも,J.C.エクルズは単なる反復は有効でないと考える。それは,神経系の高次レベルではほとんどすべてのニューロンはつねに興奮しているから,シナプスでの信号の通過は絶えず起こる現象であるため,信号の通過だけでは直ちにそのシナプスの伝達の強化につながるとは考えがたいとし,二つの入力が同時に活動する場合に限って強化が起こると主張した。これを〈学習の関連説conjunction theory of learning〉という。小脳の運動学習の場合の小脳皮質神経回路の変化はこれにあたる。
学習 →小脳 →トレーニング
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「練習」の意味・わかりやすい解説

練習
れんしゅう

心理学的には、精神的または身体的作業の望ましい方向への変容(作業時間の短縮、質の向上など)を目的として、その作業を反復することと説明される。したがって練習には、作業を反復して行う側面と、その結果として作業が望ましい方向へ変容していく側面とがある。前者を「練習活動」、後者を「練習効果」という。また、練習者がその目的を意識して作業を反復練習する場合(たとえば、計算練習、野球の守備練習など)を「有意識練習」、目的を意識しない場合(たとえば毎日無意識に行う着替え、掃除など)を「無意識練習」という。

[中原忠男]

練習曲線

練習による作業の進歩、向上の過程は、横軸に練習期間、縦軸に練習効果をとった練習曲線で表される。

 練習曲線は、練習の内容や方法によって、また練習効果として何をとるか(一定時間内の作業量、一定作業に要する時間、正答率など)で、いろいろな形のグラフとなる。(1)初発努力――練習の初期は先行学習の転移、興味、特別な動機づけなどで強い努力が示され、効果があがる。(2)プラトー――飽き、疲労などのために進歩、上達が一時停滞する現象。(3)終末努力――練習が終わりに近づいたことに気づくと一段の努力がなされ、効果があがる。(4)最終プラトー――練習は最後に、これ以上効果があがらないという極限に達する。しかし、動機づけを高めるとさらに進歩する場合がある。生理学的にこれ以上進歩しないとされる極限を生理的極限という。

 練習は、ただ多くの量をこなせば効果があがるというものではない。効果的な練習を行うために、心理学者や教育学者がいろいろな原理や方法を研究している。一般には次のような点を考慮することがたいせつであろう。(1)練習の意義、必要性、練習への興味などを感じさせ、意欲的に取り組ませる。(2)適宜評価をし、欠点に気づかせたり、励ましたり、競争意識をもたせたり、成功感、達成感を体験させたりする。(3)易から難へと進む練習であること。(4)一つの作業をいくつかに分けて練習する(分習法)か、全体を何回も反復する(全習法)かを検討する。(5)休憩をどのように入れるかを検討する。

[中原忠男]


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普及版 字通 「練習」の読み・字形・画数・意味

【練習】れんしゆう(しふ)

稽古。また、熟練。〔晋書、胡毋輔之伝〕原、兵馬にす。山濤其の才の邊任に堪ふるをす。擧げられて太尉長と爲る。

字通「練」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「練習」の意味・わかりやすい解説

練習
れんしゅう
practice

特定の行動をより能率的に行うために,あるいは特定の習慣を形成するために一定の行動を反復して行うこと。練習による行動の変容過程は,学習曲線と同じように,横軸に試行回数,縦軸に作業量の測度をとり,いわゆる練習曲線として描くことができる。

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世界大百科事典(旧版)内の練習の言及

【実践】より

…一般に,抽象的思弁としての〈理論〉に対して,人間の自然や社会に対する〈働きかけ(活動)〉をいう。西欧語では,practice(英語),Praxis(ドイツ語),pratique(フランス語)など。その場合,自然に対する働きかけを,とくに〈労働〉と呼び,社会に対する働きかけを,倫理的・政治的活動として,とくに〈行為〉(英語conduct,ドイツ語Handlung,フランス語conduite)と呼ぶことがある。…

【トレーニング】より

…また運動の負荷と休息の関係による分類として,運動の負荷と負荷の間に完全な休息をおくレピティション・トレーニング,不完全休息をはさんでのインターバル・トレーニングがあり,特殊な環境下でのトレーニング分類として,高所トレーニング,低圧トレーニング,低酸素トレーニングなどがある。運動体力づくり練習【黒田 善雄】【小山 亜希子】。…

※「練習」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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