行動療法(読み)こうどうりょうほう(英語表記)behavior therapy

翻訳|behavior therapy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

行動療法
こうどうりょうほう
behavior therapy

人間に異常行動が現れ,それが繰返される基盤には生理的側面が関与することを重要視して,心理-生理学的実験に基づく理論を臨床に応用しようとする精神科治療法の一つ。問題行動というものを,学習されたときの条件づけの不足または欠如によるものと,条件づけ過剰に基づくものに分類してとらえ,不足している条件づけは積極的に補強し,反対に過剰な条件づけは減少させるようにするのが行動療法である。その技法はかなり多彩であり,他の多くの精神療法が患者の内的心理に働きかけるのに対して,行動療法では,外に現れた行動を修正することによって内的心理に影響を及ぼそうと試みる。

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デジタル大辞泉の解説

こうどう‐りょうほう〔カウドウレウハフ〕【行動療法】

神経症・心身症などの不適応行動は、誤った学習や条件付けによるとして、学習理論に基づいて適応行動に変えていこうとする心理学的な療法。

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百科事典マイペディアの解説

行動療法【こうどうりょうほう】

行動科学に基づいて,問題行動を治すことを目的とした治療法の総称条件づけ療法または学習療法とも呼ばれる。パブロフの条件反射学にはじまり,ワトソンの行動主義,ソーンダイクの学習心理学教育心理学)などを経て,アイゼンクによって,行動療法の名称が一般化した。 この療法では,行動とは生体を媒体とする刺激と反応の結果とみなす。さらに,正常な行動と同じように,異常行動も条件づけによる学習の結果ととらえて,その条件を消去するために次のような方法をとる。(1)条件づけ法 患者にとって好ましい条件づけ(ジュースや菓子,ほめ言葉,点数など)と,いやな条件づけ(身体的拘束,叱責,無視など)を用意して,目的とする行動が現れたら好ましい条件づけを,問題行動が出たらいやな条件づけを与える。小児自閉症チック吃音ヒステリー非行精神発達遅滞,慢性統合失調症精神分裂病)など,適用の範囲は広い。 また,夜尿症の患者のシーツに,排尿するとブザーが鳴るように配線をしておくことで,膀胱内圧が上昇してもブザーを鳴らさないように排尿を制止する習慣をつけるといった方法もある。(2)条件性制止法 チックなど,やめたい行動を反復して集中的に行い,その後に一定の休憩を与えるという過程を繰り返すことによって,反復による疲れが学習されて症状が消失される。吃音や心因性失語症なども対象となる。(3)バイオフィードバック療法 脳波や皮膚電気抵抗測定器などで身体に現れるリラックス状態を計測し,患者がリラックスしているときに,それを教えてあげる精神療法。これによって,自分でリラックスする状況を管理できるようになる。(4)認知行動療法 鬱(うつ)病などの原因を患者本人の考え方にあるとみなし,こうした認知のゆがみをほぐす〈論理療法〉などの治療法を〈認知療法〉という。この認知療法と行動療法を折衷したものが認知行動療法である。 よく用いられる方法として,医師と患者の役割を交代するロールプレイがある。医師が患者と同じ訴えを伝えて,患者は医師にアドバイスをする。これによって,患者は自分の状態をより客観的に把握することができる。 自分のこととなると凝り固まった考えしかできなくても,友人には常識的な判断ができるといった傾向を利用したもので,主に鬱病,パニック障害摂食障害の治療に用いる。
→関連項目外傷後ストレス障害対人恐怖症論理療法

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世界大百科事典 第2版の解説

こうどうりょうほう【行動療法 behavior therapy】

問題行動,不適応行動,病的行動などといわれるものの発生と持続の姿を学習心理学の立場からとらえ,それらを学習理論にもとづく技法によって適応的に治療改善させようとする心理治療の方法の総称。これは,20世紀初頭から研究報告の上では条件反射療法(技法),学習療法,条件づけ療法(技法),補強療法,オペラント条件づけ技法などと記載されてきたものを包括する。こうした各種の名称はそれが基礎とした学習理論の違いから発している。

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大辞林 第三版の解説

こうどうりょうほう【行動療法】

神経症や拒食症などの不適応行動を学習されたものと考え、学習理論に基づいて適応的な行動へと変容させようとする心理療法の総称。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

行動療法
こうどうりょうほう
behavior therapy

心理療法の一つ。1960年に出版されたH・J・アイゼンク編『行動療法と神経症』によって行動療法の名称が広まった。精神分析のように、神経症の原因に無意識を想定し、そこに潜むコンプレックスの解除によって治療が成り立つという考え方とはまったく異なった療法である。行動療法は行動理論と学習理論に立脚してなされるが、治療の目標は、まず行動の変容である。意識や無意識に働きかけるのではなく、異常行動そのものを治療の対象とする。たとえば、乗り物恐怖症の治療の場合、無意識的な死の願望というようなコンプレックスを想定し、患者にそれを理解させるといったような手続ではなく、乗り物に乗れないという行動そのものを問題とし、実際乗れるように指導していくという手続がとられる。ただし、このような行動そのものの実現のために、イメージなどの意識過程を操作するという手続を利用することもある。
 行動療法では、異常行動は素質ではなく後天的に学習されたものであると考える。したがって、学習の原理によって、適切に学習し直すのが治療である。主として条件づけの考え方にたって、さまざまな治療法がくふうされている。
 その代表的なものが系統的脱感作法で、主として恐怖や不安を解消するためにくふうされた方法である。たとえば急行電車に乗れないという恐怖症に対して、まず電車に乗ることにかかわる事項についての恐ろしさの程度を調べ、それを恐ろしさの順に並べる。一方で、患者に筋肉弛緩(しかん)を主とした弛緩法を訓練して、弛緩している状態にさせ、そこで一番不安のない刺激をイメージしてもらう。そして、その刺激をイメージしても十分弛緩していられる状態になったら、順序に従って次の刺激に移り、同じ手続を繰り返し、電車に乗る場面まで移行していき、そのイメージを描いても十分弛緩していられるようにしていく方法である。それとは逆の技法がフラッディング法で、患者を最初からもっとも恐ろしい、あるいは好まない刺激にさらして、逃避できない状態におき、これを繰り返す。条件性制止療法は、チック症などに適用される療法で、一定時間積極的に目をパチパチさせ、その後、一定時間休憩させる。このセットを繰り返し訓練する。嫌悪療法は、不適切な行動が生じたときに、不快な刺激を与える方法であり、不快な刺激として電気ショックや化学的物質を投与することもある。オペラント条件づけ法は、嫌悪療法とは逆に、好ましい行動を促進する方法で、原理的には、好ましい行動が生じたならば、ほめたり、ほしいものを与えたり、したいことをさせたりする療法である。以上がよく知られた方法であるが、そのほかに、自分で自分の行動をコントロールするセルフコントロール法や、行動だけでなくイメージを用いる認知的行動療法という意識も取り入れた療法が開発されている。[春木 豊]
『坂野雄二著『認知行動療法』(1995・日本評論社) ▽宮下照子・免田賢著『新行動療法入門』(2007・ナカニシヤ出版)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

こうどう‐りょうほう カウドウレウハフ【行動療法】

〘名〙 精神科領域における不安、恐怖、強迫症状などの治療法の一つ。条件づけの理論にしたがって、学習された患者の不適応的習慣である行動障害を除去しようとするもの。

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世界大百科事典内の行動療法の言及

【行動変容】より

…行動変容(または行動修正)と行動療法とは同義的または互換的に使用され,いまだ明確な統一見解はない。そのいずれの用語をとるかは,行動療法の基礎理論としてレスポンデント条件づけ法を重視するかオペラント条件づけ法(条件づけ)を重視するか,変容の対象行動が神経症以上の不適応行動か一般的人間行動か,臨床心理学的実践を先発の医学との関係でどうとらえるか,あるいは基礎理論が学習理論だけかそれに限らず実験心理学から広義の行動科学のものまで広げるかなどの違いによることが多く,しかもそれらが錯綜して無自覚的に使用されている。…

【精神療法】より

…第3には,それによって新しい適応した行動を身につけること(自己実現,行動変容)である。一般に,危機や新しい不安に対しては,受容的態度で患者の自己表現をはかり,洞察をまつが,慢性化した行動や態度の異常に対しては学習や訓練の側面が中心となる(行動療法,森田療法)。治療者との人間関係に重点をおくもの(精神分析,カウンセリング)から特殊な状況のなかでの変容を期待するもの(森田療法,内観療法)等,また,理論や利用する手段に従ってさまざまな分類がある。…

※「行動療法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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