日本大百科全書(ニッポニカ) 「自転車運転者講習制度」の意味・わかりやすい解説
自転車運転者講習制度
じてんしゃうんてんしゃこうしゅうせいど
道路交通法の改正に伴い、2015年(平成27)6月1日から始まった、危険な交通違反を繰り返す自転車の運転者に課す安全講習の制度。
自転車乗用中の危険行為で違反切符による取締りを受けたり交通事故を起こしたりして、3年以内に2回以上検挙された場合、公安委員会の命令で、自転車運転者講習を受けなければならない。3か月以内に受講しなかった場合は、5万円以下の罰金となる。講習の場所には各都道府県の自動車運転免許試験場などがあてられ、交通ルール一般や自転車の通行に関するルールなどを講習内容とする。受講料は受講者が負担する。危険行為には、信号無視、指定場所一時不停止、酒酔い運転、安全運転義務違反(ヘッドホンの装着や無灯火、傘さし運転など)、妨害運転(あおり運転ともいう。この項目は2020年に追加)といった15の類型が定められている。また、この制度の対象は14歳以上となっている。
背景には、健康志向の高まりなどから自転車の利用者が増える一方で、ルールを守らない運転者により、歩行者との事故やトラブルが絶えないばかりか、自動車の運転の妨げになっているケースも多く、自転車の運転者に対して厳正な対処を求める声が目だってきたことがある。こうした制度ができた一方で、免許制度がない自転車の運転者がルールをきちんと学ぶ場が確保されていないことや、自転車が安全に走れる空間の整備が十分ではないといった課題があり、自転車と自動車、歩行者とが安心して共存できる総合的な道路政策が求められている。
[佐滝剛弘 2022年1月21日]