航空燃料(読み)こうくうねんりょう(英語表記)aviation fuel

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

航空燃料
こうくうねんりょう
aviation fuel

航空機のエンジンに使用する燃料。レシプロエンジンには高オクタン価 (80~130) のガソリンを使い,タービンエンジンには灯油に近いジェット燃料油 (灯油型のジェットA,ジェット A1,低蒸気圧ガソリン型のジェットBなど) を使用する。これらの航空燃料には,発熱量の高いこと,燃焼性のよいこと,揮発性のよいこと,アンチノック性の高いこと (ガソリン) ,低温に耐えられること,腐食性のないこと,貯蔵安定性の高いことなど,航空機特有の性状が要求される。たとえば燃焼性については,煤煙や炭素の生成が少なく,完全燃焼することにより,大気汚染を少なくするなどの要求がある。また低温に耐えられないと成分の一部が凍結したり,粘度が高くなって燃料の流れが不均一になったりして燃焼性が悪くなるといった不都合が生ずる。 (→オクタン価 , ノッキング )

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世界大百科事典 第2版の解説

こうくうねんりょう【航空燃料】

航空機のエンジン用燃料。現在用いられている航空燃料は,ピストンエンジン機やヘリコプターの一部に使用されているピストンエンジン用の航空ガソリンと,ジェット機,ターボプロップ機,ヘリコプターに使用されている航空用ガスタービン(いわゆるジェットエンジン)に用いられるジェット燃料に分けられる。原油枯渇に対する将来の航空燃料としては,人造石油系燃料以外に液化メタンや液体水素などが考えられ研究も行われているが,世界中の多くの空港への分配,輸送,貯蔵,補給などの問題がある。

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大辞林 第三版の解説

こうくうねんりょう【航空燃料】

航空機に使用する燃料。ピストン-エンジン機には航空ガソリン、ジェット-エンジン機には灯油を主成分とするジェット燃料が使われる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

航空燃料
こうくうねんりょう
aviation fuel

航空機の原動機(エンジン)に使用される燃料の総称。航空機用の原動機には、古くは蒸気エンジン、電気モーターのほか、ピストンエンジンでもディーゼルエンジンが用いられたこともあったが、現在ではそのほとんどがガソリンを燃料とするピストンエンジンと、ケロシン(軽油)系の燃料を使用するタービンエンジンで、特殊な用途としてロケットエンジンが使われる程度である。したがって、航空燃料は航空ガソリンとジェット(タービン)燃料とからなるといってよい。[落合一夫]

航空燃料の特性

航空原動機の運転条件は地上のエンジンと異なり大きく変化すること、また大きさの割に大きな出力が要求されるので、航空燃料もそれに適応する特性が必要である。
(1)発熱量が大きいこと。たとえばジェットエンジンでは燃料は燃焼室で連続的に燃焼している。推力は燃料の発熱量に比例するので、高い発熱量は推力の増大と燃料消費量の減少に直結する。
 航空燃料の発熱量は1ポンド(453.6グラム)当りのBTU(British thermal unit252カロリー)、または1キログラム当りのキロカロリーで示されるが、航空ガソリンでは1万8720BTU/ポンド以上、ジェット燃料では1万8400BTU/ポンド以上が要求されている。
(2)燃焼性がよいこと。始動性と燃焼の持続性がよく、また煤煙(ばいえん)や有毒ガスを発生しないように完全燃焼することが要求される。
(3)揮発性がよく、高高度でのベーパーロックvapor lock(蒸気閉塞(へいそく))の傾向が少ないこと。高高度に上昇すると気圧とともに気温も低下し、成層圏では標準状態でも零下56.5℃に達する。また極地では地上でも零下50℃以下になることもある。揮発性が低いと引火しにくく、低温時の始動性と燃焼性が悪くなる。逆に沸点の低い成分の混入が多いと、燃料配管の中で気化した蒸気が配管をふさいで燃料の供給を不均一にするベーパーロックをおこしやすい。
(4)低温に耐え、水分の含有率が少ないこと。耐低温性が悪いと、高高度の低温により燃料の粘度が高くなって供給が不均一になったり、燃焼室での燃焼状態が悪くなる。また、燃料の成分が変化したり、溶解している水分が凝固して燃料フィルターや配管を詰まらせる危険もある。
(5)化学的・熱的に安定性が大きいこと。航空機は環境上、温度変化が大きく、また貯蔵や輸送に対しても安定性は必要である。
(6)腐食性がないこと。燃料に含まれている硫黄(いおう)分は燃料タンクや配管・エンジン部品を腐食させる。またジェット燃料では、燃料に含まれているバクテリアが繁殖してフィルターや配管を詰まらせたり、燃料タンクの漏れ止めのシール剤を侵食することがある。
(7)航空ガソリンでは、必要かつ十分なアンチノック性があること。
(8)入手しやすく価格が安いこと。航空機は大量に燃料を消費するため、各所で補給する必要がある。1960年代に隆盛の極にあった航空輸送業が、70年代に相次いで起こった第一次、第二次の石油パニックで一挙に大不況にみまわれたことは、航空燃料の価格の重要性を示している。[落合一夫]

航空ガソリンとジェット燃料

前記のようにもっとも一般的な航空燃料である。
(1)航空ガソリンaviation gasoline 原油を蒸留の温度によって、軽揮発油、重揮発油、灯油、軽油、重油に分離する。ガソリンは、軽揮発油留分を規格にあうように精製して得られる。航空ガソリンには、十分なアンチノック性、適度の揮発性、高発熱性、高化学安定性、耐寒性などが要求される。とくにアンチノック性は不可欠で、使用するエンジンの特性に応じてオクタン価またはパフォーマンス(出力)価で示される何段階かのグレードに分けられている。現在広く用いられているのは100/130または91/96オクタン程度だが、エンジンの信頼性の向上と燃料価格の高騰により、自動車用高オクタンガソリンの使用も一部で考慮されている。
(2)ジェット燃料jet fuel 軽揮発油から灯油までの留分を規格にあわせて配合する。ワイドカットガソリンwide cut gasolineとケロシンkerosene系燃料の2種類がある。ワイドカットガソリンはジェットBまたはJP‐4とよばれ、軽揮発油と重揮発油(ナフサ)の混合に灯油を加えてつくる。ケロシン系燃料はジェットAまたはJP‐5とよばれ、灯油留分から精製されるが、安全対策上、民間航空では引火点の高いケロシン系燃料が使用される。航空機では大量の燃料を搭載しているので、事故が起これば大きな被害をもたらすため、墜落して燃料が漏れた場合の火災の防止など、安全性の確保についての研究が進められている。[落合一夫]

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