ガソリンのアンチノック性を数量的に示す指数。オクタン価の高いガソリンほどアンチノック性が高い。現代の高性能ガソリンエンジンは、熱効率をあげるため高い圧縮比(約8以上)が用いられるが、高圧縮比エンジンではガソリン成分が不適当な場合、ノッキングとよぶ異常燃焼をおこしやすく、これがおこるとかえって出力が低下し、またエンジン損傷の原因となる。したがってこの障害を避けるためには、ガソリンとしてノッキングをおこしにくい性質が必要で、この特性をアンチノック性とよぶ。これを数量的に表示するため、アンチノック性がきわめて高いイソオクタンをオクタン価100、アンチノック性がきわめて低いノルマルヘプタンをオクタン価0と定め、これら2種の標準燃料混合物中のイソオクタンの容量%の数値をもって、そのオクタン価とする。たとえばイソオクタン90%、ノルマルヘプタン10%の混合標準燃料のオクタン価は90である。試料ガソリンをこれら種々のオクタン価の標準燃料と、CFRエンジンとよばれるオクタン価測定用エンジンでアンチノック性を比較し、試料ガソリンのオクタン価を測定する。
この測定法には、自動車ガソリンではリサーチ法(F‐1法、おもに低速時性能を示す)、モーター法(F‐2法、おもに高速時性能を示す)の2種があり、日本の規格ではリサーチ法を採用している。また航空ガソリンでは航空法(F‐3法、巡航時性能を示す)、過給法(F‐4法、過給時性能を示す)の2種がある。日本の自動車ガソリン規格では、リサーチ法オクタン価が特級(1号、プレミアム)95以上、並級(2号、レギュラー)85以上と定められている。航空ガソリンの大部分はオクタン価が100以上で、この場合のオクタン価はほぼ最高出力に比例する出力価(パフォーマンス価)で示され、最高のものは航空法115以上、過給法145以上に達する。
ガソリンのオクタン価は炭化水素組成により著しく異なり、直鎖状(ノルマル)パラフィン系はもっとも低く、ナフテン系がこれに次ぎ、枝鎖の多いイソパラフィン系、イソオレフィン系はきわめて高く、芳香族系がもっとも高い。原油中のガソリン沸点範囲に相当する留分、すなわちナフサはきわめてオクタン価が低く、このままでは使用できないため、その接触改質法により芳香族性の改質ガソリンを製造するほか、接触分解ガソリン、異性化ガソリン、アルキレートなどの各種高オクタン価ガソリンが製造され、とくに高オクタン価を必要とするものにはアンチノック剤が添加されている。
[原 伸宜]
ガソリンのアンチノック性を数量的に表す指数で,ガソリンエンジンの燃料としてもっとも重要な性質である.すなわち,オクタン価の高いガソリンほど,アンチノック性が高く,エンジン内で出力低下の原因となる異常燃焼のノッキング現象を起こしにくい.ガソリンのアンチノック性はその化学的成分によって大差があり,分枝状脂肪族および芳香族炭化水素がもっとも高く,直鎖状脂肪族炭化水素がもっとも低い.アンチノック性の高い代表的成分として,イソオクタン(2,2,4-トリメチルペンタン),アンチノック性の低い代表的成分としてヘプタンの2種類の炭化水素を標準燃料として,それぞれのオクタン価を100および0と定める.オクタン価はこれら両成分を任意の割合に混合した標準燃料が示すアンチノック性を,この燃料中のイソオクタンの容量%(体積%)の数値で表す.試料ガソリンのオクタン価は,国際的に規格化されたCFRエンジンとよばれる測定機を使用し,各種オクタン価の標準燃料と実験的にアンチノック性を比較して測定される.これまでに各種炭化水素純品のオクタン価が測定されており,またその混合物のオクタン価には加成性がほぼ成り立つことから,ガソリンの成分分析の結果より,計算により求める方法が一般的となっている.自動車ガソリンのオクタン価測定法には,モーター法(motor method)とリサーチ法(research method)の2種類があり,前者は高速時の,後者は低速時のアンチノック性にほぼ対応する.わが国では,自動車ガソリンのオクタン価は規格上リサーチ法で表示されている.
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ガソリンのアンチノック性を示す指標。熱効率の高い,圧縮比の大きいエンジンにオクタン価の低いガソリンを使用するとノッキングを起こすので,適正なアンチノック性,すなわち適正なオクタン価をもつガソリンを使う必要がある。ガソリンのオクタン価の測定には,CFR標準エンジン(アメリカ材料試験協会で定めたオクタン価測定用のエンジン)を用いるリサーチ法とモーター法,実際の市販自動車を用い走行条件を変えて行う修正ユニオンタウン法と修正ボーダーライン法などがある。ガソリンのオクタン価を評価するための標準燃料としては,イソオクタン(オクタン価100)とn-ヘプタン(オクタン価0)の混合物が用いられ,あるガソリンがある標準燃料と同一のアンチノック性を示すとき,その標準燃料のイソオクタン含有量(容量%)をもってそのオクタン価とする。ガソリンに含まれる炭化水素類のうち,イソパラフィンや芳香族炭化水素はオクタン価が高い。
執筆者:冨永 博夫
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