荘長(読み)しょうちょう

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改訂新版 世界大百科事典 「荘長」の意味・わかりやすい解説

荘(庄)長 (しょうちょう)

荘園の荘官職の一つ。主として9世紀の初期荘園荘官としてあらわれている。797年(延暦16),太政官は王臣家・寺社の荘に寄住する浪人調庸の取りたてを国司はきちんとおこなうべきであり,荘長はそれを拒んではならない,また荘長はその権威をかりて私に田地を開作してはならない,ということを命令している。さらに,850年(嘉祥3),東大寺の荘園阿波国新嶋荘では荘長である家部財麿が荘田の確認をおこなっている。つまり,浪人をふくめた荘民の監督指揮をおこない,荘田を把握してその耕作に荘民を組織する責任をもつという,9世紀段階の初期荘園の在地における中枢になっているのが荘長なのである。当時の初期荘園は班田農民にくらべ,より自立性を強めつつある在地農民諸層に支えられて展開しているが,荘長は浪人を組織する,あるいは私に田地を開作するという行動をおこなっているように,これら農民諸層のうちの上層田堵(たと)とよばれている)で占められている。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「荘長」の解説

荘長
しょうちょう

平安前期の荘官の一つ。墾田経営の中核に位置し,私出挙(しすいこ)と営田(墾田)によって私富を蓄積した新たな階層である富豪層が任命された。

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