菓子を製造・販売する店。中世末の16世紀に自家製の餅(もち)や粽(ちまき)、まんじゅうを小売りする干見世(ほしみせ)や振り売りの販女(ひさぎめ)がいた。近世の17世紀からは種々の干菓子(ひがし)・羊かん・まんじゅう・うどん・そば切りなどを製造する職人の菓子師が自家製品を小売りした。そのころ、専門職人の餅師・煎餅(せんべい)師・飴(あめ)師などがいたが、やがて菓子屋に統合され、種々の和菓子を製造・販売するようになり、うどん・そば切りは切り離され別の営業となった。菓子屋は菓子師の開いた店であり、京をはじめ各地の都市にできてきた。18世紀には上菓子屋と雑菓子(駄菓子)屋に分かれ、村落にも小売りの菓子屋がみられた。大きな菓子屋では菓子細工職・菓子杜氏(とじ)・饅頭(まんじゅう)杜氏などの手間取りを抱えて、卸売りを兼ねるものや、小売りだけのものが現れた。
近代になって、洋菓子の製造・販売を兼ねる菓子屋もあったが、洋菓子の普及につれて、和菓子屋と洋菓子屋とは分離し、自家で製造・販売するものよりも、菓子問屋から仕入れて小売りするほうが多くなった。和菓子・洋菓子の職人や職工は問屋の支配下に置かれてきた。機械化は和菓子より洋菓子のほうがはるかに進み、和菓子屋よりも洋菓子屋のほうが盛んとなっている。
[遠藤元男]
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