日本大百科全書(ニッポニカ) 「藤田湘子」の意味・わかりやすい解説
藤田湘子
ふじたしょうし
(1926―2005)
俳人。神奈川県生まれ。本名良久(よしひさ)。水原秋桜子(しゅうおうし)の流麗な自然詠に深く傾倒し、1943年(昭和18)『馬酔木(あしび)』に入会、49年に同人となる。『馬酔木』においてすでに俳人として自立していた石田波郷(はきょう)の影響も強く受け、57年波郷の後任として編集長となる。64年に『馬酔木』の新鋭俳人の活動の場として同人誌『鷹(たか)』を創刊し、代表となるが、秋桜子に受け入れられなかったため主要同人が去り、湘子自身は68年『馬酔木』を離脱、『鷹』の主宰として新たな活動を始めた。さまざまな手法の試みを許容し、現代俳句の可能性を追求する先鋭的な結社の先頭にたち、作風も馬酔木的抒情(じょじょう)から大胆な二物衝撃(ものとものとの思いがけない配合)へと変化した。積極的な評論活動とともに、「一日十句」を3年間発表し続けるなど、実践をもって後進の育成にあたった。句集に『途上』(1955)、『狩人(かりゅうど)』(1976)、『去来の花』(1986)、『前夜』(1993)、『神楽(かぐら)』(1999)など。評論集に『俳句全景』(1974)ほかがある。『神楽』により2000年(平成12)第15回詩歌文学館賞受賞。
[鷹羽狩行]
天山(てんざん)の夕空も見ず鷹老いぬ
『『俳句シリーズ 人と作品9』(1973・桜楓社)』▽『『句集 去来の花』(1986・角川書店)』▽『『句集 前夜』(1993・角川書店)』▽『『狩人(かりうど)――藤田湘子句集』(1997・邑書林)』▽『『神楽――藤田湘子句集』(1999・朝日新聞社)』▽『『信濃山河抄――藤田湘子句集』(1999・ふらんす堂)』▽『『句帖の余白』(2002・角川書店)』▽『『入門 俳句の表現』(角川選書)』