虫食(読み)むしくい

精選版 日本国語大辞典 「虫食」の意味・読み・例文・類語

むし‐くい ‥くひ【虫食】

〘名〙
① (「むしぐい」とも) 虫が食うこと。むしばむこと。また、その痕(あと)。また、そのような形のもの。むしかめ。むしばみ。転じて、欠点のあること。傷のあること。
平家(13C前)二「彼の二つの栴(なぎ)の葉に一首の歌を虫ぐひにこそしたりけれ」
※虎明本狂言・栗焼(室町末‐近世初)「四つあまるおこせひ、其内にむしくひが一つござった」
② 特に、作物などが虫に食われて損害を蒙ること。また、そのもの。虫損。
※鵤荘引付‐明応六年(1497)五月「当国近年虫喰以外也。仍於府中惣社・諸山申被付仁王執行有之」
※艷魔伝(1891)〈幸田露伴〉「歯は油断なく良き歯磨にて磨きさへすれば齲歯(ムシクヒ)となる気遣なく候」
④ 老いた鶯(うぐいす)の異称。
※枕(10C終)四一「鶯は、文などにもめでたきものに作り、〈略〉夏秋の末まで老声に鳴きて、むしくひなど、ようもあらぬ者は名をつけかへていふぞ、口をしくくすしき心地する」
⑤ 籠写(かごうつし)一種書画などで、敷写しで中を空白にしその輪郭だけを細い線で写し取ること。双鉤(そうこう)
滑稽本浮世床(1813‐23)二「蝕(ムシクヒ)とか云ふ双鉤(ふたへもじ)に、薄墨をさした油障子
焼物で、素地(きじ)と釉(うわぐすり)との収縮率の差から焼成後に小さな釉の剥落ができたもの。虫に食われた痕に似ているところからいう。中国、明末頃のもの(古染付など)に多く、一種の風情があり、茶人に喜ばれた。

むし‐ばみ【虫食】

〘名〙 虫が食うこと。また、その跡。むしくい。
※宇津保(970‐999頃)内侍督「らふのむしばみなどしたるに、あやけづり出だしなどしたるに、からくさ・とりなどゑりすかしてあるにいれて」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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