フランスの小説家、美術評論家ユイスマンスの長編小説。1884年刊。貴族出身の主人公デ・ゼッサントは、実人生の倦怠(けんたい)と懐疑から神経症に陥り、養生のためパリ郊外に居を求め、世間との交渉を絶って昼と夜を逆さまにした生活のなかで、自己の嗜好(しこう)を徹底させた人工楽園を築き、世紀末的爛熟(らんじゅく)の美に耽溺(たんでき)する。しかし虚無感は克服できず、かえって心身の焦悴(しょうすい)をいっそう激化させた主人公は、絶望のうちにかすかな希望を宗教に求めてパリに戻る。自然主義文学の打倒を目ざした作品で、徹底した厭世観(えんせいかん)、象徴主義の透徹した理解が際だつ。世紀末美学の精緻(せいち)な展開が異彩を放っている。
[秋山和夫]
『渋澤龍彦訳『さかしま』(1966・桃源社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
3/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
2/13 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
1/12 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
12/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/10 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新