さかしま(読み)サカシマ(英語表記)À rebours

デジタル大辞泉 「さかしま」の意味・読み・例文・類語

さかしま[書名]

原題、〈フランスÀ reboursユイスマンス長編小説。1884年刊行。自然主義作家であった著者が、神秘主義に転向した最初作品

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「さかしま」の意味・わかりやすい解説

さかしま
À rebours

フランスの小説家、美術評論家ユイスマンスの長編小説。1884年刊。貴族出身の主人公デ・ゼッサントは、実人生の倦怠(けんたい)と懐疑から神経症に陥り、養生のためパリ郊外に居を求め、世間との交渉を絶って昼と夜を逆さまにした生活のなかで、自己の嗜好(しこう)を徹底させた人工楽園を築き、世紀末的爛熟(らんじゅく)の美に耽溺(たんでき)する。しかし虚無感は克服できず、かえって心身の焦悴(しょうすい)をいっそう激化させた主人公は、絶望のうちにかすかな希望を宗教に求めてパリに戻る。自然主義文学の打倒を目ざした作品で、徹底した厭世観(えんせいかん)、象徴主義の透徹した理解が際だつ。世紀末美学の精緻(せいち)な展開が異彩を放っている。

[秋山和夫]

『渋澤龍彦訳『さかしま』(1966・桃源社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「さかしま」の意味・わかりやすい解説

さかしま
À Rebours

フランスの小説家 J.K.ユイスマンスの小説。 1884年刊。俗悪な現実を嫌悪し,深刻な倦怠感に悩まされた人物デ・ゼサント Des Esseintesによる,すべてが「さかしま」な反自然の人工美の追求を描く。作者はここで,従来の自然主義小説を脱して,デカダンスの世紀末的ビジョンを定着するとともに,主人公の口を通して象徴派の詩をいちはやく認めた。

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