改訂新版 世界大百科事典 「ユリノキ」の意味・わかりやすい解説
ユリノキ
tulip tree
Liriodendron tulipiflora L.
街路樹,公園樹として世界中で親しまれているモクレン科の落葉高木。その特異な葉の形が半纏(はんてん)に似ることから,ハンテンボクの,また花の形からチューリップ・ツリーの別名がある。大きなものは高さ60m,胸高直径3mにもなる。晩春,チューリップに似た黄緑色の花を咲かせる。花弁の内側に明るい橙黄色の部分があり,そこから蜜を出す。花の構成や顕著な托葉をもつなどの点ではモクレン科の特徴をもつが,葯が外向,果実は翼果で,果托が冬も枝についたままであることなどから,本属2種だけで独立したユリノキ連を構成する。ユリノキは北アメリカ東岸の,おもに河川沿いや山腹に生育し,中国大陸の長江流域にはシナユリノキL.chinense(Hemsl.)Sarg.が隔離分布する。材はやや軽軟であるが,建築材・家具材等に広く使われる。昔,インディアンは丸木舟を作るために大木を切り出した。生育が速く,条件が良ければ実生から10年で10mをこえるが,風で枝折れをすることがある。
執筆者:植田 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報