クロマツ(読み)くろまつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロマツ」の意味・わかりやすい解説

クロマツ
くろまつ / 黒松
[学] Pinus thunbergii Parl.

マツ科(分子系統に基づく分類:マツ科)の常緑針葉高木。別名オマツ。大きいものは高さ50メートル、直径3.8メートルに達する。樹皮は黒灰色で亀甲(きっこう)状の割れ目ができ、やや厚い鱗片(りんぺん)となってはげ落ちる。葉は2個束生し、針状で長さ8~15センチメートル、幅1.4~2.0ミリメートルあり、質が堅い。雌雄同株。4、5月に開花する。直立した新しい枝の上端に球形で紫紅色の雌花を数個つけ、下部雄花を群生してつける。雄花は包鱗(ほうりん)に二つの葯室(やくしつ)があり、黄色の花粉をたくさん出す。球果は卵状円錐(えんすい)形で長さ4~8センチメートル、径2.5~3.0センチメートル、種鱗(しゅりん)には各2個の種子がある。種子は2年で成熟し、菱(ひし)形で長さ約5ミリメートル、種子より3倍長い翼がある。本州、四国、九州(吐噶喇(とから)列島の宝島まで)、および朝鮮半島南部に広く自生し、また各地で植林される。木は庭園、公園、並木、盆栽、いけ花などに賞用され、材は建築、器具、土木船舶パルプなどに使われる。また幹から松脂(まつやに)をとる。

[林 弥栄 2018年5月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロマツ」の意味・わかりやすい解説

クロマツ(黒松)
クロマツ
Pinus thunbergii; Japanese black pine

マツ科の常緑高木で日本特産。海岸地帯に多い。樹高 35mに達し,樹皮は暗黒色で亀甲状の深い割れ目ができる。濃緑色の葉はアカマツより硬く長さ 10~15cm,幅 1.5mm内外でオマツ (雄松) の別名はこれによる。雌雄同株で,雄花は毎春伸びる新枝の下部に多数生じ長さ 10mmあまりの長楕円体,雌花はその頂部に1~3個つき卵形紅紫色。受粉してから成熟するまでに1年以上もかかる。完熟した球果は長さ5~6cm,直径3~3.5cm。潮風に強く海岸の防風林砂防林として植えられる。材は樹脂が多く良材とはいえないが耐久力があるので土木用材などに用いられる。また庭園樹,盆栽として喜ばれ,多くの栽培品種が知られている。

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