《如来滅後五五百歳始観心本尊抄》の略称。日蓮が1273年(文永10)撰したもの。真跡の17紙が中山法華経寺に現存するが,表裏両面に記載され,佐渡の流人の窮乏生活を思わせる。中国天台の智顗(ちぎ)の十界互具(じつかいごぐ),一念三千の理論にもとづくが,凡夫を仏と隔絶した存在とみる認識に立ち,その凡夫が,《法華経》の題目を〈南無妙法蓮華経〉と唱える(唱題する)ことにより,題目に包含されている釈尊の因行果徳の功徳(くどく)を自然(じねん)に譲与されるとした。これが観心であるが,いいかえれば,そう信ずる信心である。さらに,信仰・実践の対象としての本尊の様相を明らかにした。日蓮の宗教の基本である本門の本尊と題目を示す最重要書。
執筆者:高木 豊
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