訴訟上の救助(読み)そしょうじょうのきゅうじょ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

訴訟上の救助
そしょうじょうのきゅうじょ

民事訴訟において、資力のない当事者に、訴訟に必要な費用等の支払いを猶予する制度(民事訴訟法82条以下)。訴訟の準備および追行に必要な費用は、各当事者がそれぞれ支出しておき、訴訟終了後、判決で定められた負担に応じて当事者間で清算することになっている。したがって、訴訟をしようとする者は相応の資力を必要とする。しかし、資力がないから訴訟ができないというのでは、裁判を受ける権利(憲法32条)が空文に化することになる。そこで訴訟上の救済制度が意義を有することになる。日本の制度はきわめて貧弱で従来ほとんど機能してこなかったが、昭和40年代以降の、交通事故、公害などに関する事件の激増に伴い、救助の申立て件数も急激に増加し、判例・学説をにぎわすようになった。

 救助の要件として、
(1)「訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者」であること
(2)「勝訴の見込みがないとはいえない」こと
が必要である。(1)は、訴訟の準備と追行に必要な諸費用を支払えないこと、これを支払っていたら自己および家族の経済生活に支障をきたすことである。絶対的に貧乏であるということではない。(2)は、勝つ見込みがないではないということであって、勝つ見込みがあるということではない。当事者は、裁判所へ救助の申立てをし、上の二つの要件の存在を疎明(そめい)(いちおうの証明)しなければならない(民事訴訟規則30条)。

 訴訟上の救助は、各審級ごとに与えられ(同法82条2項)、これを受けた者のためにのみその効力を有する(同法83条2項)。救助の決定により、当事者は次の費用につき、その支払いを一時猶予される。免除されるのではない。

(1)裁判費用(訴訟費用のうち当事者が裁判所へ納入しなければならないとされる手数料、立替金。民事訴訟費用等に関する法律3条・7条・11条)の支払いの猶予
(2)執行官および裁判所が附添(つきそい)を命じた弁護士の報酬および立替金の支払いの猶予
(3)訴訟費用の担保の免除
 したがって、訴訟費用のうちでも、当事者費用は救助の対象にならないし、弁護士費用なども対象にならない。救助を受けた者が費用の支払いをする資力を有することが明らかになったときは、救助の取消しがなされる。猶予された費用は、のちに、負担を命ぜられた者から国が取り立てる。

[本間義信]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の訴訟上の救助の言及

【法律扶助】より

…そこで無資力者でも裁判をはじめとする法律上の保護を受けられるように公的に援助する必要があり,これが法律扶助である。 現在,法律で用意されているものとしては,刑事事件における国選弁護人の制度と民事事件における〈訴訟上の救助〉の制度がある。国選弁護人とは,刑事被告人が貧困その他の理由によって自分で弁護人を選任することができない場合に,裁判所が被告人の請求により国費をもって選任する弁護士である(日本国憲法37条3項,刑事訴訟法36条,刑事訴訟規則29条)。…

※「訴訟上の救助」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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