諏訪大社下社(読み)すわたいしやしもしや

日本歴史地名大系 「諏訪大社下社」の解説

諏訪大社下社
すわたいしやしもしや

下社は諏訪湖北の平の東北部にあって、下諏訪町大門だいもんにある春宮と下諏訪町武居たけいにある秋宮に分れる。春宮は川と、和田わだ峠から下ってきた中山道に挟まれ、北東の山に山吹やまぶき城跡がある。秋宮は春宮の東南一キロ余にあって、東側を承知しようち川が流れる。門前を甲州道中が横切り、北西は下諏訪宿に続き、南西には神宮じんぐう寺があった。近くに諏訪盆地では最大の前方後円墳青塚あおづか古墳がある。

上社とともに信濃国一之宮であり、「延喜式」に「南方刀美神社二座名神」とあるものの一とされる。祭神は、建御名方命、及びその祀神八坂刀売命で、事代主命を配祀。一般的には下社の祭神は八坂刀売命として知られている。八坂刀売の名は、「続日本後紀」承和九年(八四二)一〇月の条に、「奉授(中略)信濃国无位建御名方富命前八坂刀売神(中略)並五位下」とみえる。

諏訪大社が上下社に分れていることを明示したものとしては、「吾妻鏡」治承四年(一一八〇)の条が最も古く、同書には諏方下宮・諏方南宮下社とみえ、以後、諏訪下社などともよばれている。

上社とは同一の神社で、諏訪湖を挟んで並び立っており、諏訪湖の御神渡おみわたりも上社の男神が下社の女神を訪ねると解されている。祠官については上社と若干の違いがあり、上社の神長官にあたる五官祝の筆頭は武居祝とよぶ。上社の本宮と前宮との関係とは異なり、春宮と秋宮は全く同格で、両宮に神が半年ずつとどまるものとされている。また、神事については、「諏方大明神画詞」に、二月一五日に下社神宮寺で常楽会、上社では四月に花会が行われることを記した後に、「此外大小神事、春祭ノ外、七十余日、両社同日同会也、此一会時節不同ノ間、別ニ是ヲ記ス、当社ハ春ノ両宮アリ」と、ほとんど同じ神事が行われていることを示している。「画詞」に下社の神事として詳述されているのは、七月一日の神幸のみである。一方、上社の年内神事次第旧記には、三月の小(大)県の神使が下社にまで巡幸していることを示して「下宮神事、鵲宮湛馬場上湛、伴町おい河も何も御神事、(中略)下宮は夜明の肴ニ鯉なり」とある。また、同書には、上社の神事の際に、下社がしばしば所役を負担していることが記されており、中世における両社の関係を暗示している(下諏訪町誌)

社殿の構成の上での特徴は春宮と秋宮に分れていることで、両社はほぼ同様の規模で、社殿も共通するものが多い。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の諏訪大社下社の言及

【下諏訪[町]】より

…諏訪湖の北岸に位置し,湖岸の砥(と)川扇状地に市街地を形成する。中心集落の下諏訪は近世,中山道と甲州道中の分岐点の宿駅であり,古代からの歴史をもつ諏訪大社下社(重文)の門前町,さらに温泉町として栄えた。第2次世界大戦前は製糸業中心の町であったが,戦後,カメラ,オルゴール,時計を主体とする精密工業,繊維工業が飛躍的に発展し,県下有数の工業地帯となっている。…

※「諏訪大社下社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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