長野県中央部にある盆地。フォッサマグナに形成された構造盆地で,北東~南西約5km,北西~南東約15kmの紡錘形をなし,中央に諏訪湖(湖面標高759m)を抱く。南西側および北東側は断層によって画され,前者はフォッサマグナ西縁の糸魚川-静岡構造線にあたる。東部は標高800~1300mの八ヶ岳すそ野地域に連なる。盆地は狭義には諏訪湖周辺の沖積地をさすが,広義にはこの火山すそ野地域も含む。内陸高地のため,年降水量は1200mm前後と日本では比較的少なく,冬季の冷込みは厳しいが,肥沃な土壌に恵まれて開発は古く,弥生時代から水田耕作が営まれてきた。信濃国の一宮で諏訪信仰の中心をなす諏訪大社があり,近世は中山道と甲州道中が交わる交通の拠点でもあった。また,近世から冬季の寒冷な気候を生かした寒天,凍餅(こおりもち),凍豆腐づくりや,尾張・三河から繰綿(くりわた)を移入し,弓で打って篠巻(しのまき)として中央高地の各地に移出した綿打ち,醸造業,のこぎり製造などの農村工業が発達した。明治初期には片倉組(現,片倉工業)をはじめ,地場資本による製糸業が勃興し,以降,諏訪湖西岸の岡谷を中心に昭和初期まで全国一の製糸工業地帯として発達した。昭和恐慌により製糸工業は衰退したが,第2次大戦中に疎開してきた工場を中核に,カメラ,顕微鏡,時計,オルゴールなど精密機械工業が発達,日本では数少ない内陸工業地帯に発展し,〈東洋のスイス〉と呼ばれるようになった。また製糸業は自動繰糸機の導入により近代化され,生産形態は大きく変化したが,屑繭や玉繭を処理するため,器械座繰製糸も残され,屑生糸の利用からメリヤス加工も始められた。このほか電子機械,産業機械や醸造業なども発達している。工業の集積により,諏訪湖畔には岡谷市,下諏訪町,諏訪市の市街地が連接して,県内では長野・松本両市に次ぐ人口集中地区を形成している。しかし山地が湖岸に迫り,平たん地が限られているため人口密度が高く,県内他地域に比較して地価などが高いため,工業の規模拡大が困難になっている。このため大工場の中には諏訪湖周辺から八ヶ岳山麓や松本盆地,伊那盆地に移転する例も目だってきている。盆地内には諏訪湖をはじめ上諏訪・下諏訪の両温泉,諏訪大社などがあって観光資源に恵まれ,霧ヶ峰,蓼科(たてしな)山,八ヶ岳など八ヶ岳中信高原国定公園の入口にもあたり,年間を通じ観光客が多い。盆地東側にはJR中央本線,国道20号線,西側には中央自動車道が通じる。
執筆者:市川 健夫
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長野県中央部、本州中央部を横断するフォッサマグナにできた盆地。狭義には諏訪湖を中心とする平坦(へいたん)地だけをいうが、広義には八ヶ岳(やつがたけ)、蓼科(たてしな)火山山麓(ろく)の山浦地方とよばれる地域を含む。諏訪湖を中心とする地域は岡谷(おかや)・諏訪の両市と下(しも)諏訪町からなり、製糸工場から変わった精密機械工業が発展している。山浦地方は標高900~1200メートルの高原地で、高原野菜の栽培が一部で行われるほか、近年別荘地に開発されている。盆地内は諏訪湖、温泉など観光資源が多い。
[小林寛義]
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