譬喩歌(読み)ヒユカ

世界大百科事典 第2版の解説

ひゆか【譬喩歌】

《万葉集》中の相聞(そうもん)の歌を表現様式上から3分類した名称の一つ。正述心緒歌(ただにおもいをのぶるうた)(心に思うことを直接表現する),寄物陳思歌(ものによせておもいをのぶるうた)(物に託して思いを表現する)の2分類と並び,物だけを表面的に歌って思いを表現する,いわゆる隠喩(いんゆ)の歌をいう。しかし寄物陳思歌との境界が不明瞭な場合もある。〈ぬばたまのその夜の梅をた忘れて折らず来にけり思ひしものを〉(巻三)は女性を梅にたとえた譬喩歌である。

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大辞林 第三版の解説

ひゆか【譬喩歌】

万葉集における歌の分類の一。表現技法に基づく分類で、心情を直接表現せず、何かにたとえて詠んだ歌。内容は主として、恋歌。巻三・巻七等に部立てとしても見られる。たとえ歌。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

譬喩歌
ひゆか

『万葉集』の歌の分類の一つ。『万葉集』では「正述心緒(ただにおもひをのぶる)」の歌、「寄物陳思(ものによせておもひをのぶる)」の歌とともに、物のみを表に出して心に思うことをたとえる「譬喩」の歌をたてており、表現方法を基とした歌の3分類の一つである。なお、『万葉集』では、歌を詠んだ事情や動機を基に、雑歌(ぞうか)、相聞(そうもん)、挽歌(ばんか)の3分類もたてているが、これとは異なった分類基準による分け方である。譬喩歌では、心の思いは、歌の表に出したものに隠されて直接には表現されず、また、恋歌に限られている。「託馬野(つくまの)に生ふる紫草衣(むらさききぬ)に染(し)めいまだ着ずして色に出でにけり」(万葉集)。平安時代以後この分類名がみられないのは、和歌において譬喩的表現が一般化したためであろう。[新井栄蔵]

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