雑歌(読み)ゾウカ

デジタル大辞泉 「雑歌」の意味・読み・例文・類語

ぞう‐か〔ザフ‐〕【雑歌】

歌集部立ての一。万葉集では相聞そうもん挽歌ばんかに属さないすべての歌をいう。古今集以後では、四季・賀・離別羇旅きりょ・恋などに分類されない歌をいう。ぞうのうた。ぞう。ざっか。

ざっ‐か【雑歌】

ぞうか(雑歌)

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精選版 日本国語大辞典 「雑歌」の意味・読み・例文・類語

ぞう‐かザフ‥【雑歌】

  1. 〘 名詞 〙 和歌の分類、歌集の部立の一つ。四季・恋・賀・哀傷・旅・別など以外の歌で、歌材や歌の内容において明確に分類できない雑多のものをいう。例えば風や月のように季節感のないものをよんだ歌、不遇や老などを嘆く述懐の歌など。ただし、「万葉集」の分類では、挽歌相聞以外の歌すべてをいい、むしろ公的なはれの歌、四季歌のような正統的な歌も含み、「古今集」以下の雑歌とは内容を異にする。くさぐさのうた。ぞうのうた。

ざっ‐か【雑歌】

  1. 〘 名詞 〙ぞうか(雑歌)

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改訂新版 世界大百科事典 「雑歌」の意味・わかりやすい解説

雑歌 (ぞうか)

歌集における和歌の分類項目名。〈くさぐさのうた〉とも呼ばれる。《万葉集》では相聞(そうもん),挽歌ばんか)と並ぶ三大部立(ぶだて)の一つとして,他の2者に属さない内容の歌を収める。中国の《文選(もんぜん)》に見える雑歌,雑詩等の名称に学んだものと思われるが,内容的にはそれらと異なり,従駕応詔,遊宴など,むしろもっとも公的・本格的な性格の歌を擁し,柿本人麻呂,山部赤人らの吉野における宮廷讃歌などを収めるのも雑歌の部である。全巻雑歌から成る巻一・五・六・十六のほかにも多くの巻に見え,他の部立と並ぶ場合は常にその先頭におかれる。また巻八・十では四季分類との併用も試みられるなど,巻により種々特色を生じている。《古今集》以後になると,雑歌に包含されていた歌が四季,賀,羇旅などの部立のもとに独立し,雑歌には嘆老,不遇,無常感の表出等,どの部立にも収めかねる雑多な歌が残される結果となり,さらには本格的でないもの,諧謔的要素のものなどの傾向が加わり,《拾遺集》のように四季や恋の巻に対して雑春,雑秋,雑恋といった巻を立てるものも現れる。またこれに伴い,集内でも概して巻末に近い方に位置するようになる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雑歌」の意味・わかりやすい解説

雑歌
ぞうか

「相聞(そうもん)」「挽歌(ばんか)」と並ぶ、『万葉集』における三大部立(ぶだて)の一つ。「相聞」「挽歌」に含まれない内容の歌を総括するが、国見(くにみ)、遊猟(ゆうりょう)、行幸(ぎょうこう)など宮廷生活の晴の場でなされた歌などを収め、編纂(へんさん)にあたっては「雑歌」が他の二つの部に優先する。『万葉集』では、巻1、3、5、6、7、8、9、10、13、14、16の諸巻に「雑歌」の部をたてる。その部立の名称は、『文選(もんぜん)』に典拠を求めたと認められ、歌の内容からする「相聞」「挽歌」に対して、主として歌の場に基づくのが「雑歌」の部立だといえる。宮廷生活の晴の歌の集合として、表だった本格的な歌という意識があったものとみられる。ただ、平安時代以後、同じ名称ではあるものの性格はまったく異なる「雑歌」がある。『古今集』などの部立としてみられるものであるが、他の部立には入りがたい多様な歌が収められる。四季、恋に対して、それ以外の幅広い内容を包括する部となっていったものである。

[神野志隆光]

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百科事典マイペディア 「雑歌」の意味・わかりやすい解説

雑歌【ぞうか】

歌集の部立(ぶだて)(分類項目)の一つ。《万葉集》では,相聞(そうもん),挽歌(ばんか)以外のすべてを収め,行幸,旅,公私の宴の場合の最も晴れがましい歌を含む。相聞,挽歌より前に置かれ,後の歌集の雑の部より高い位置を占めている。《古今和歌集》以後は,四季,賀,離別,羇旅(きりょ),物名,恋等に入らない雑多な歌として考えられるようになり,巻末に近い方に位置する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雑歌」の意味・わかりやすい解説

雑歌
ぞうか

歌集の部立の一つ。文字どおり種々雑多の内容の歌をいう。『万葉集』で用いられたのが最も古く,巻一,三,五,六,七,八,九,十,十三,十四,十六の諸巻にみえる。中国の『文選 (もんぜん) 』の雑歌,雑詩,雑擬の分類にならったと考えられるが,『万葉集』では,相聞,挽歌以外のすべてを雑歌としているため,行幸,遷都,宮廷の宴会など,公的な,晴れがましい場の作が多数含まれ,また常に相聞,挽歌に先立って配列されていることからも,むしろ雑歌を歌の本格的なものとする意識があったと考えられる。『古今集』以下の勅撰集では,春,夏,秋,冬,賀,離別などの多くの部立の一つであり,また巻末近くにおかれており,むしろ字義どおりの用い方がされているといえよう。

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デジタル大辞泉プラス 「雑歌」の解説

雑歌

足立巻一による詩集。1983年刊行(理論社)。1984年、第17回日本詩人クラブ賞を受賞。

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世界大百科事典(旧版)内の雑歌の言及

【雑歌】より

…《万葉集》では相聞(そうもん),挽歌(ばんか)と並ぶ三大部立(ぶだて)の一つとして,他の2者に属さない内容の歌を収める。中国の《文選(もんぜん)》に見える雑歌,雑詩等の名称に学んだものと思われるが,内容的にはそれらと異なり,従駕応詔,遊宴など,むしろもっとも公的・本格的な性格の歌を擁し,柿本人麻呂,山部赤人らの吉野における宮廷讃歌などを収めるのも雑歌の部である。全巻雑歌から成る巻一・五・六・十六のほかにも多くの巻に見え,他の部立と並ぶ場合は常にその先頭におかれる。…

※「雑歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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