歌集における和歌の分類項目名。〈くさぐさのうた〉とも呼ばれる。《万葉集》では相聞(そうもん),挽歌(ばんか)と並ぶ三大部立(ぶだて)の一つとして,他の2者に属さない内容の歌を収める。中国の《文選(もんぜん)》に見える雑歌,雑詩等の名称に学んだものと思われるが,内容的にはそれらと異なり,従駕応詔,遊宴など,むしろもっとも公的・本格的な性格の歌を擁し,柿本人麻呂,山部赤人らの吉野における宮廷讃歌などを収めるのも雑歌の部である。全巻雑歌から成る巻一・五・六・十六のほかにも多くの巻に見え,他の部立と並ぶ場合は常にその先頭におかれる。また巻八・十では四季分類との併用も試みられるなど,巻により種々特色を生じている。《古今集》以後になると,雑歌に包含されていた歌が四季,賀,羇旅などの部立のもとに独立し,雑歌には嘆老,不遇,無常感の表出等,どの部立にも収めかねる雑多な歌が残される結果となり,さらには本格的でないもの,諧謔的要素のものなどの傾向が加わり,《拾遺集》のように四季や恋の巻に対して雑春,雑秋,雑恋といった巻を立てるものも現れる。またこれに伴い,集内でも概して巻末に近い方に位置するようになる。
執筆者:身﨑 壽
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「相聞(そうもん)」「挽歌(ばんか)」と並ぶ、『万葉集』における三大部立(ぶだて)の一つ。「相聞」「挽歌」に含まれない内容の歌を総括するが、国見(くにみ)、遊猟(ゆうりょう)、行幸(ぎょうこう)など宮廷生活の晴の場でなされた歌などを収め、編纂(へんさん)にあたっては「雑歌」が他の二つの部に優先する。『万葉集』では、巻1、3、5、6、7、8、9、10、13、14、16の諸巻に「雑歌」の部をたてる。その部立の名称は、『文選(もんぜん)』に典拠を求めたと認められ、歌の内容からする「相聞」「挽歌」に対して、主として歌の場に基づくのが「雑歌」の部立だといえる。宮廷生活の晴の歌の集合として、表だった本格的な歌という意識があったものとみられる。ただ、平安時代以後、同じ名称ではあるものの性格はまったく異なる「雑歌」がある。『古今集』などの部立としてみられるものであるが、他の部立には入りがたい多様な歌が収められる。四季、恋に対して、それ以外の幅広い内容を包括する部となっていったものである。
[神野志隆光]
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…《万葉集》では相聞(そうもん),挽歌(ばんか)と並ぶ三大部立(ぶだて)の一つとして,他の2者に属さない内容の歌を収める。中国の《文選(もんぜん)》に見える雑歌,雑詩等の名称に学んだものと思われるが,内容的にはそれらと異なり,従駕応詔,遊宴など,むしろもっとも公的・本格的な性格の歌を擁し,柿本人麻呂,山部赤人らの吉野における宮廷讃歌などを収めるのも雑歌の部である。全巻雑歌から成る巻一・五・六・十六のほかにも多くの巻に見え,他の部立と並ぶ場合は常にその先頭におかれる。…
※「雑歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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