改訂新版 世界大百科事典 「赤脚子」の意味・わかりやすい解説
赤脚子 (せっきゃくし)
15世紀前半に活躍した東福寺明兆(みんちよう)系の画僧。作品に白文方印〈赤脚子〉の別号印を捺すのみで,伝歴は不明である。〈赤脚〉(すあし)は杜甫の詩句〈安得赤脚踏層氷〉(早秋苦熱詩)を典拠とすると考えられ,また同じく明兆系の霊彩は〈脚踏実地〉の雅文印を用いており,二つの印文に共通性が認められるので,両者には何らかの関係があったことが推察される。古くは画史画伝類で,明兆,霊彩と混同されていたが,3者それぞれ異なる画風をもつ別人である。赤脚子画は煩瑣(はんさ)な描線を用いるのが特徴であり,点苔や淡墨による地塗を多用する点は明兆系であることを示す。作品に,愚極礼才(1370-1452)賛の《白衣観音図》(鹿苑寺),古心慈柏(1470年まで活躍)賛の《釈迦成道図》《鉄仙人図》(ともに群馬県立近代美術館)などの道釈人物画のほか,数点の《牧牛図》がある。
執筆者:林 進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報