熊本県特産の酒。清酒のもろみを搾るまえに木灰を加えるのが特徴で,酒が赤褐色を呈するのでその名がある。灰の効用により酒の保存性がよいので灰持酒(あくもちしゆ)ともよばれる。同様な酒に,鹿児島,宮崎両県の地酒(じしゆ),石川県の七尾酒,島根県の地伝酒(じでんしゆ)などがある。この酒の起源を朝鮮半島とする民間説話も多いが,蒸米,米こうじ,水でもろみをつくり,熟成後久佐木(くさき)の灰を加えて搾る黒貴(くろき)の酒が,灰を加えない白貴(しろき)の酒とともに宮中の新嘗会(しんじようえ)に献進されたと《延喜式》(8世紀初頭)にあり,赤酒は清酒の原形の一つと考えられる。木灰の原木にはケヤキ,カシ,クヌギなどが使われる。清酒の仕込みにくらべて米こうじの使用量が多く,仕込水の量が少ないので,アルコール分は11~16%と低く,糖分は10~18%と多い。また木灰を加えるため,酒は中性ないし微アルカリ性を呈する。みりんと清酒の中間の酒として調味料としても用いられ,屠蘇(とそ)としても飲まれる。
→清酒
執筆者:菅間 誠之助
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
熊本地方特産の酒。米を原料として、発酵が終わったもろみをそのまま数十日間置き、木灰(きばい)を加えて酸を中和して搾(しぼ)る。最近では、加糖して糖分10~18%くらいの甘い酒としている。アルコール分は12%くらい。糖分とアミノ酸が結合して、赤褐色を呈してくる。赤酒の名はこの色に由来する。祝いのときや正月の屠蘇(とそ)酒として用いられるほか、料理用として、肉をふっくらとさせたり、照りを増す効果がある。赤酒は木灰を用いて中性からアルカリ性にし、火落(ひおち)菌などの侵入を防いでおり、火入れをしないので灰持(あくもち)酒ともいわれている。鹿児島、宮崎県には類似の作り方の酒、地酒(清酒を上酒とよんだのに対する語といわれる)がある。島根県松江市の地伝酒(じでんしゅ)も同類の酒である。
[秋山裕一]
(2016-4-28)
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
…酒,チーズ,みそ,しょうゆなどの各種発酵食品を製造するにあたり,材料としての米,麦,牛乳,大豆,あるいはブドウやリンゴなどの果実の品質の選定はもちろんのことながら,発酵に関与する微生物の菌株の選定,また発酵時の温度,水素イオン濃度(pH),酸素分圧などの諸条件の設定を,永年の経験から適切に行い,風味豊かな良質の食品や飲料を巧みに生産していたのは,まさに驚嘆に値する。発酵が適度に進行した時点で,加熱殺菌処理によって過度の反応を抑止し,アルコールが酸に変化するのを防止する技術も備えていたし,熊本地方の名産赤酒のように,通常の発酵の途中で灰汁を加えてpHをアルカリ性に変えることにより,代謝の流れをグリセロール蓄積の方向へと切り替えて甘みをふやすというように,近代発酵工学に勝るとも劣らぬ知恵と技術を持ち合わせていたのである。 酵素はこのようにして,日常生活に不可欠な存在として人類と深いかかわりをもってきたのであるが,その存在と実体が認識されたのは,近々,わずか数百年前のことであった。…
※「赤酒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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