フランスのシャンパーニュ地方でできる発泡性のワイン。シャンパーニュ地方以外でつくられた発泡性ワインをシャンパンとよぶことは禁止されている。同じフランスでも他の地域の酒はバン・ムスーvin mousseux、またドイツではゼクトSekt、イタリアではスプマンテspumante、スペインではカバcavaとよばれる。日本ではシャンペンともいう。
[原 昌道]
シャンパンは17世紀の終わりごろ、シャンパーニュ地方のホービェー僧院の酒倉係をしていたドン・ペリニョンの発見といわれる。ある年、発酵がまだ残っているワインを瓶に詰めて、コルク栓でしっかり栓をしておいたところ、翌年あけてみると炭酸ガスが酒に含まれて、なんともいえぬよい味になっていた。これが1694年のことで、この寺の秘法として伝わったものが、のちにこの地方に広がったといわれる。
[原 昌道]
シャンパン用のブドウは赤のピノ・ノワール種とピノ・ムニエ種、白のシャルドネ種である。発酵終了後ブレンドして品質の均一化を行い、瓶に詰める。瓶内の酒には糖分が2.5%ぐらいになるように補糖し、シャンパン酵母を加えて再発酵させる。瓶はコルクで密栓し、針金で縛る。発酵が終わると酵母が下に沈殿してくるから、瓶を逆さにして、45度に傾けて酵母を瓶口に沈降させる。次に瓶の口元だけを零下25℃に冷却した槽につけ、内部を凍らせたのち栓を抜くと、中の圧力で氷の塊のおりが外へ飛び出す。次に空いた部分にすばやく砂糖やブランデーの入ったワインを入れ、味の調節を行ったのちコルク栓をし、針金で縛って貯蔵する。以上述べた瓶内発酵は、シャンパンに課せられた規格である。
[原 昌道]
シャンパンはやや褐色がかった黄色のものが多いが、ロゼもある。炭酸ガスを含んでおり、瓶内圧力は10℃で4~6気圧、アルコールは13%程度である。甘口と辛口がある。もっとも辛口をブリュット、かなり辛口をエクストラ・セック、辛口をセック、やや甘口をドゥミ・セック、甘口をドゥとよんで区別する。ただしシャンパンでは、セックでも糖分は3~4%含まれており、甘く感じる。高価なシャンパンのなかでも、シャンパンの発見者の名前を冠したドン・ペリニョン(モエ・シャンドン社で製造)はとくに有名である。
[原 昌道]
『田中辰幸著『シャンパン全書』(1994・白墨舎)』▽『山本博著『シャンパン物語』(1992・柴田書店)』
フランスのシャンパーニュ地方でつくられる発泡性ブドウ酒。日本では〈シャンペン〉とも俗称され,かつては〈三鞭酒〉と書いた。成分中のアルコール分は13%前後。発泡性ブドウ酒は英語ではスパークリングワインと呼ばれ,高圧(3.5~6気圧),中圧(2.5気圧以上),低圧(2気圧以下)のものがあり,フランスのほかドイツ,イタリア,スペイン,ポルトガルその他でつくられている。フランスではバンムスーvin mousseuxと呼び,シャンパンの名称を使用することができるのは,シャンパーニュ地方の一定の地域のもので,原料ブドウの品種,収穫量,搾汁収量,瓶内発酵などについての規制に合致する高圧のものに限られている。ブドウの品種はピノーノアール,ピノーブラン,シャルドネの3種に限られ,軽く圧搾してえた搾汁を発酵させる。こうして辛口の白ブドウ酒をつくり,これに約2.5g/lの糖分と酵母を加えてから瓶詰にして密栓し,針金でしばって20℃くらいで再発酵させる。再発酵後は瓶をだんだん斜めに倒して毎日少しずつ回転し,3ヵ月ほどかけて酵母のおりを瓶口に沈降させる。出荷が近づくと瓶の口の部分を凍らせ,斜めに傾けてコルクを抜くと酵母の氷が外へとび出す。すばやく同一のブドウ酒かシロップを補てんして新しいコルク栓を打ち,針金でとめる。再発酵時には瓶内圧力は20℃で6気圧にも達するが,酵母を除く操作で4~5気圧になる。出荷までは瓶を横にして12℃くらいで貯蔵熟成する。糖分を加えないものをブリュットといい,シロップを添加したものはその量によって,セック(辛口),ドミセック(中辛口),ドゥー(甘口)などの種類がある。シャンパンは瓶発酵させるのが原則であるが,瓶発酵させたものを耐圧タンクに集めて調合,ろ過し,瓶詰にする方法も認められている。
シャンパンは料理とともに多量に飲むものではなく,せんを抜く音と,細かい泡立ちと,8℃ほどに冷やしたさわやかな味とを楽しむもので,主として祝いの酒としてパーティでの乾杯に用いられる。
執筆者:大塚 謙一
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…この地方はケスタ地形をなしているため,乾燥シャンパーニュと湿潤シャンパーニュの間には,〈シャンパーニュの急崖Côte de Champagne〉があり,湿潤シャンパーニュの外側では,ロレーヌの側を〈ムーズの急崖〉,ブルゴーニュの側を〈バールの急崖〉が切っている。 〈イル・ド・フランスの急崖〉の稜線は森林でおおわれ,急崖に露頭をみせる粘土層に湧水線があり,水はけのよい山麓には有名なシャンパンの原料ともなる〈白の中の白(ブラン・ド・ブラン)〉ブドウ酒の産地が広がっている。ブドウ作りは1ha足らずの零細経営が多いが,19世紀の病虫害とたび重なる戦禍によって大企業の買収も進んだ。…
※「シャンパン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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