日本大百科全書(ニッポニカ) 「赤金鉱」の意味・わかりやすい解説
赤金鉱
あかがねこう
akaganeite
酸化鉱物。1961年(昭和36)南部松夫(1917―2009)らにより岩手県江刺(えさし)市(現、奥州(おうしゅう)市江刺区)赤金鉱山(閉山)から発見された新鉱物。最初はFeOOHのβ(ベータ)変態(β-FeOOH)とされていたが、現在ではCl(塩素)を主成分とするFe8(OH,O,Cl)17という組成式と単斜晶系(原記載では正方晶系)の結晶系が与えられている。磁硫鉄鉱の風化分解によって生成されたものと考えられる。Clの存在はその後採集された原産地標本、アメリカのミネソタ州ヒビングHibbing鉱山産標本、南極産隕石(いんせき)の分解物からも確認された。また、ある種の土壌や地熱帯中の地下水中、あるいは団塊をなす海底堆積(たいせき)物、紅海深部の塩水中からも確認されたとの報告があるほか、火星表面での存在も確実視されている。命名は原産地にちなむ。
[加藤 昭 2015年12月14日]