足掛(読み)あしかけ

精選版 日本国語大辞典 「足掛」の意味・読み・例文・類語

あし‐かけ【足掛】

〘名〙
① 足を踏みかけること。また、そのためのもの。
※鉱山至宝要録(1691)上「鋪の内ふさがぬ様に、足掛(アシカケ)をするを打替と云」
② (「あしがけ」とも) ある場所に足を踏み入れること。
※花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉中「東京へ逃げ帰って二度と地方へ足掛(アシガ)けをせぬ様になるに相違ない」
③ めかけ。「てかけ」をしゃれていった語。→てかけあしかけ(手掛足掛)
雑俳・削かけ(1713)「かかへて行・いやおてかけのあしかけの」
④ 次の発展のためのいとぐちにすること。また、そのいとぐちとなる事柄。足がかり。あしば。
※落語・ちきり伊勢屋(1893‐94)〈禽語楼小さん〉「其女は和郎(おまい)の家を足掛けに為(し)て外の好い人の処へ逃げて仕舞ふて」
⑥ (多く年月などを表わす数詞の上につけて用いる) 年、月、日などで期間を表わすのに、始めと終わりの年(月、日)をそれぞれ一年(月、日)で数える数え方。
※雑俳・誕生日(1705)「二歩だせばあしかけ一日二夜也」

あし‐がかり【足掛】

〘名〙
① 足を踏み立てる場所。足場。あしだち。
※両足院本毛詩抄(1539)一六「京は大なをかぢや程に足かかりのよい処に居て」
② 高い所にあがるとき、足をかけるささえ。足場。あししろ。あななひ。
歌舞伎筑紫巷談浪白縫黒田騒動)(1875)大詰「平舞台上手に明荷を三つほど積み重ね、屋体の下一間の下家(げや)下足掛(アシガカリ)の書割(かきわり)
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉五「前足を懸け易(か)へて足懸りを深くしやうとする」
物事をしようとする時の糸口。手づる。手がかり。足かけ。
※邦子(1927)〈志賀直哉〉「出る事の出来なかった泥沼で、それが一寸した私の足掛りとなった」

そっ‐かけ ソク‥【足掛】

〘名〙 人形浄瑠璃社会で、妾をいう。文政天保一八一八‐四四)ごろ上方流行語となった。あしかけ。てかけ。〔楽屋図会拾遺(1802)〕

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デジタル大辞泉 「足掛」の意味・読み・例文・類語

あし‐かけ【足掛(け)】

足を掛けること。また、足を掛けるもの。
年・月・日を数える場合、1年・1月・1日に満たない前後の端数をそれぞれ1として数える数え方。例えば、ある年の12月から翌々年の1月までなら「足掛け三年」と数える。→まるまん
《「あしがけ」とも》柔道などで、相手の足に自分の足を掛けて倒す技。
足掛け上がり」の略。

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