デジタル大辞泉
「丸」の意味・読み・例文・類語
まろ【▽丸/▽円】
[名・形動ナリ]
1 まるいもの。また、まるいさま。
「大きなる松の木などの二三尺にて―なる」〈枕・三〇六〉
2 丸々とふとっているさま。
「―にうつくしく肥えたりし人の」〈源・宿木〉
3 まるまる全部。
「秀歌を―ながら取られて侍るが」〈毎月抄〉
4 銭。
「銭を―ともいふなり」〈塵添壒嚢抄〉
5 他の語の上に付いて複合語をつくり、ひとかたまりのままの、そのままの、などの意を表す。
「紐解かず―寝をすればいぶせみと」〈万・四一一三〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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まる【丸・円】
- ( 「まろ」の変化した語 )
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- [ 一 ] まるい形。また、まるい形をしたもの。
- ① 円形、また、円筒形・球形。
- [初出の実例]「丸になりとも菱になりとも御望み次第で御座ります」(出典:歌舞伎・好色伝受(1693)上)
- ② 中世、近世の城郭で、本丸・二丸・三丸など、城を構成する部分。
- [初出の実例]「丸々の手垂共出合散々に防戦ふ事、火花を散す風情也」(出典:応仁略記(1467‐70頃か)下)
- ③ 金銭、特に貨幣をさしていう。
- [初出の実例]「イヤモウ〇になることならなんなりと相談に来ることさ」(出典:歌舞伎・隅田川続俤(法界坊)(1784)口明)
- ④ ( 甲羅が円形であるところから ) 近世の関西方言で、鼈(すっぽん)をいう。
- [初出の実例]「『丸(マル)とは何だヱ』『御当地でいふ鼈(すっぽん)じゃがな』」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
- ⑤ 記号としての◯印。単なる目印や、×(ばつ)に対して良い評価を表わすための印などに用いる。
- [初出の実例]「此三字をばかかいで、そこにまるをせられたぞ」(出典:百丈清規抄(1462)一)
- ⑥ 句点。「文の切れめにまるをうつ」
- ⑦ 半濁点。「『は』に丸を打てば『ぱ』」
- ⑧ 紋所の名。円形単独のものの他、薄(すすき)の丸、丸に吾木香(われもこう)など、他の模様と組み合わせたものがある。
- [初出の実例]「丸に二つひきもっかう打たるは、二でうのくらんどきよひらのもん也」(出典:説経節・あいごの若(山本九兵衛板)(1661)二)
- [ 二 ] ( 形動 ) 欠けないで全部。形を完全に保っていること、完全に相当すること。また、そのさま。まるごと。まれに、「と」を伴って副詞的に用いる。
- ① 分割した一部ではなく、全部を包含すること。手を加えないでもとの状態のままであること。
- [初出の実例]「名田分事、〈略〉当反銭より、丸と此方へ可レ納候」(出典:政基公旅引付‐文亀三年(1503)六月八日)
- 「丸とは土間桟敷のかりきりを云ふ」(出典:伝奇作書(1851)後集)
- ② 月日や時間などが完全に満たされていること。
- [初出の実例]「三世を契る妹と背の、まるに一夜さ添ひ果てす」(出典:浄瑠璃・傾城無間鐘(1723)四)
- ③ 文字通りそれだけで、ほかのものが混じっていないこと。完全にその状態であること。まったく。
- [初出の実例]「一日もまるに閑なことは難得ぞ」(出典:玉塵抄(1563)三五)
- ④ 「まるふだ(丸札)」の略。
- [初出の実例]「ナニ三十三がある、それは丸(マル)か半札(はんのり)か」(出典:滑稽本・八笑人(1820‐49)四)
- [ 三 ] 一まとまりの量や重さを数える単位。
- ① 綿を数えるのに用いる。綿の一包みをいうか。一説に、重さの単位で五〇斤(三〇キログラム)という。
- [初出の実例]「イト fitomaru(ヒトマル)」(出典:ロドリゲス日本大文典(1604‐08))
- ② 銅・銀などの重量をいうのに用いる。貫。
- [初出の実例]「あかかねの内、さんはんきんあまり、〈略〉そののこりころくしうまる、あきうとしゅに、つかわし申やうに」(出典:捷解新語(1676)一〇)
- ③ 和紙を数えるのに用いる単位。紙の種類によって異なり、半紙は六締(一万二千枚)、大半紙は四締(二千枚)、塵紙は半紙と同じ(時に大半紙と同じ)、美濃紙は四締(一万枚)、奉書は一束(そく)四八枚で八束を一丸とする。
- [初出の実例]「カミ fitomaru(ヒトマル)、または、ジュッソク」(出典:ロドリゲス日本大文典(1604‐08))
- [ 四 ] 江戸の吉原遊郭で、遊女の揚銭が倍額となる日。正月や節供の日など。丸の日。
- [初出の実例]「正月は、元日より十六日までまるなり」(出典:評判記・吉原すずめ(1667)上)
- [ 2 ] 〘 接頭語 〙
- ① 数詞の上に付いて、その数が満ちる意を表わす。満。「あしかけ」に対する語。
- [初出の実例]「まる一年たえて便はなけれどもここを去ること遠からぬげな」(出典:狂歌・狂歌机の塵(1735))
- ② 名詞に付いて、完全にその状態であるさまを表わす。「まる損」「まるもうけ」「まる勝ち」など。
丸の語誌
( 1 )中世期までは「丸」は一般に「まろ」と読んだが、中世後期以降、「まる」が一般化した。本来は、「球状のさま」という立体としての形状を指すことが多い。
( 2 )平面としての「円形のさま」は、上代は「まと」、中古以降は加えて「まどか(まとか)」が用いられた。「まと」「まどか」の使用が減る中世には、「まる」が平面の円の意をも表わすことが多くなる。
まる【丸・麻呂】
- [ 1 ] 〘 造語要素 〙 ( 「まろ(麻呂)」の変化したもの。室町時代ごろから見られる ) 種々の名称の語末の構成要素として用いる。
- ① 人名、特に、幼名に用いる。「蝉丸」「牛若丸」など。
- [初出の実例]「なにまるなんどと云はをさな名ぞ」(出典:日本書紀桃源抄(15C後))
- ② 身分の卑しい者、下層の者に用いる。「夫丸」「仕丁丸」など。
- [初出の実例]「仕丁丸は拝殿前に候了」(出典:大乗院寺社雑事記‐文明一九年(1487)五月二六日)
- ③ 刀・楽器、その他の器物の名に用いる。
- [初出の実例]「此太刀を抜丸といふゆゑは」(出典:平治物語(1220頃か)中)
- ④ 船の名に用いる。
- [初出の実例]「西国に聞えたるつき丸といふ大船に」(出典:義経記(室町中か)四)
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙 種々な物の名や人名などに付けて、親愛の意を表わす。
- [初出の実例]「もずまる、その程はよにはあれども」(出典:俊頼髄脳(1115頃))
- [ 3 ] 〘 代名詞詞 〙 自称。室町中期ごろから、天皇または、これに準ずる人が用いた。→麻呂(まろ)[ 三 ]。
- [初出の実例]「まるが千人の后のましませども」(出典:御伽草子・熊野の本地(室町末))
がんグヮン【丸】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 魚肉や鳥肉をつぶしてまるめた団子。すまし汁に入れる。
- ② ( 「丸無点(がんむてん)」の意から ) 「九」を表わす学生仲間の符丁。
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙
- ① 丸薬の名に添える。
- [初出の実例]「赤痢猶未レ愈。仍服二呵梨勒丸世丸一」(出典:小右記‐永延元年(987)六月九日)
- ② 丸薬を数えるのに用いる。
- [初出の実例]「俊通朝臣蘇香円〈廿丸〉佐渡土産干鴈一贈レ之」(出典:実隆公記‐明応五年(1496)九月一〇日)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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普及版 字通
「丸」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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丸
まる
日本の船名のあとにつけられる語で,使われた上限は 12世紀末期までさかのぼる。一般に普及したのは室町時代以後で,小船を除いてほとんどの船が船名のあとにこの丸号をつけた。その由来には諸説があって,定説はない。しかし目下のところでは,刀や楽器などに丸をつけたのと同様に,船主が自己の所有船に対する愛称として用いたとする説が最も無難のようである。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の丸の言及
【舟∥船】より
…
【船の歴史】
ごく初期の舟には,大別して三つの構造様式がある。それは(1)丸木舟,(2)いかだ,(3)動物の革(皮)の舟である。[丸木舟]は大きい丸太をくり抜き,両端をとがらせて作るため〈くり舟dugout〉とも呼ばれる。…
※「丸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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