(読み)アツ

デジタル大辞泉 「軋」の意味・読み・例文・類語

あつ【軋】[漢字項目]

[音]アツ(漢) [訓]きしる きしむ
車輪などがこすれあって音をたてる。「軋轢あつれき

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「軋」の意味・読み・例文・類語

きしり【軋】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物がすれあって音をたてること。きしること。また、その音。
    1. [初出の実例]「工みなし五十歳の門の戸の輾」(出典:俳諧・洗朱(1698))
  3. 人と人との間がうまくゆかないで、争いなどが生じること。軋轢(あつれき)。不和。
    1. [初出の実例]「此天産物の脂が両性の間を和げて、軋轢(キシリ)を遏(と)めること請合の妙薬に出来て」(出典二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉上)

きしみ【軋】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「きしむ(軋)」の連用形名詞化 )
  2. きしきしと音をたてること。
    1. [初出の実例]「滑桁(すべりけた)のきしみと、凍った雪を蹴る蹄の音がそとにひびくばかりであった」(出典:橇(1927)〈黒島伝治〉四)
  3. 争うこと。また、あれこれと思いめぐらすこと。不調和。不和。「二人の間に軋が生じる」
    1. [初出の実例]「最前そちを討たんとせし手段のきしみに」(出典:浮世草子・鬼一法眼虎の巻(1733)四)

きしろわきしろはし【軋】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 ( 動詞「きしろう(軋)」の形容詞化 ) きしろうようである。争いがちである。競争がましい。
    1. [初出の実例]「中宮参らせ給て後は、〈略〉あるにもあらぬ御有様を、きしろはしう」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)二)

きしろいきしろひ【軋】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「きしろう(軋)」の連用形の名詞化 ) きしろうこと。争うこと。きそいあうこと。きしり。ふつう「車きしろい」の形で用いられる。
    1. [初出の実例]「女房の車きしろいもありけれど」(出典:栄花物語(1028‐92頃)初花)

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普及版 字通 「軋」の読み・字形・画数・意味


8画

[字音] アツ
[字訓] きしる・ひく

[説文解字]

[字形] 形声
声符は乙(いつ)。乙は曲がった骨の形で、また車輪の転ずるときのきしる音。〔説文〕十四上に「車、(きし)るなり」とあり、(てん)は、のち輾に作る。車でものを轢(ひ)くことをいう。乙は〔史記、律書〕に「乙なるは、物の生じて軋軋たるを言ふなり」とあって、ものの群動すること、相雑ざって乱れることをいう。軋軋はその擬声語

[訓義]
1. きしる、物がすれてきしる。
2. 強い力で轢(ひ)く、ふみつける。
3. 発声がどもる。
4. 隅までかきさがす。

[古辞書の訓]
名義抄〕軋 アト・ホヒロク 〔字鏡集〕軋 トドロク・アト・ホヒロク・ナガエ

[語系]
乙eat、閼・遏at、抑ietは声義近く、同系の語。

[熟語]
・軋軋軋伊軋吃軋刑軋忽軋死軋辞軋争軋盤・軋・軋軋摩・軋轢
[下接語]
軋・軋・嗚軋・嘔軋・侵軋・勢軋・塡軋・排軋・奮軋・磨軋・幽軋

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【箏】より

…唐代(618‐907)に至り,清楽は12弦箏を用いたが,他は13弦箏を普通とした。 奏法には指で奏する搊(しゆう),骨製の爪(義甲)で奏する弾,弦を擦って鳴らす軋(あつ)があったというが,搊と弾の意味はかならずしも明確ではない。宋代(960‐1279)になると12弦箏は用いられなくなる。…

※「軋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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