黒島伝治(読み)クロシマデンジ

デジタル大辞泉 「黒島伝治」の意味・読み・例文・類語

くろしま‐でんじ〔‐デンヂ〕【黒島伝治】

[1898~1943]小説家香川の生まれ。シベリア出兵の体験に基づく反戦小説や農民小説を発表プロレタリア作家として認められた。著「二銭銅貨」「豚群」「渦巻ける烏の群」。

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精選版 日本国語大辞典 「黒島伝治」の意味・読み・例文・類語

くろしま‐でんじ【黒島伝治】

  1. 小説家。香川県小豆島出身。シベリア出兵の体験に基づく反戦小説や、貧農を描いた農民小説を発表、プロレタリア作家として認められた。作品「橇(そり)」「渦巻ける烏(からす)の群」「武装せる市街」など。明治三一~昭和一八年(一八九八‐一九四三

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改訂新版 世界大百科事典 「黒島伝治」の意味・わかりやすい解説

黒島伝治 (くろしまでんじ)
生没年:1898-1943(明治31-昭和18)

作家。香川県小豆島の自作農の長男に生まれ,小学校と実業補習学校を卒業後,島の醬油会社の醸造工となるが1年ほどで退職,文学に志す。1917年上京,勤めのかたわらドストエフスキー,チェーホフ島崎藤村,志賀直哉らに傾倒。同村出の壺井繁治と交わる。19年召集,21年シベリアに派遣され,22年肺尖炎により兵役免除。その間の《軍隊日記》は強いられた兵営生活を文学修業たらしめんとした一青年の心の記録である。その後,島で療養しながら,23年処女作《電報》,《窃む女》を書き,25年再度上京,26年《文芸戦線》に《銅貨二銭》《豚群》を書いて同人となる。28年反戦小説《渦巻ける烏の群》を《改造》に発表。29年済南事件(山東出兵)取材のため大陸を旅行して《武装せる市街》を書き30年刊行するが発禁。27年のプロレタリア芸術連盟分裂の際は労農芸術家連盟に加わるが,30年伊藤貞助らと文戦打倒同盟を結成,やがて日本プロレタリア作家同盟ナルプ)に所属,中央委員となる。33年喀血して帰島,闘病生活を続ける。その作品は小豆島を舞台にした農民文学とシベリアを描いた反戦文学とに二大別されるが,その中の秀作は〈生の危うさ〉の凝視特徴がある。
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20世紀日本人名事典 「黒島伝治」の解説

黒島 伝治
クロシマ デンジ

昭和期の小説家



生年
明治31(1898)年12月12日

没年
昭和18(1943)年10月17日

出生地
香川県小豆郡苗羽村(現・内海町)

学歴〔年〕
内海実業補習学校〔大正3年〕卒

経歴
内海実業補習学校卒業後、1年ほど船山醬油会社の醸造工になる。大正6年上京、建物会社に勤めながら小説の勉強をする。8年衛生兵として入隊し、10年シベリア出征するが、胸を患い同年除隊となる。一時帰省するが、再び上京、世田谷太子堂の壺井繁治・栄夫妻の家に寄宿する。14年「電報」「結核病室」を発表して注目され、15年「銅貨二銭」「豚群」を発表、「文芸戦線」同人。以後プロレタリア文学の文戦派作家として活躍する。昭和2年労農芸術家連盟(労芸)創立に参加。5年脱退し、文戦打倒同盟を結成、機関誌「プロレタリア」を発行、全日本無産者芸術連盟(ナップ)所属の日本プロレタリア作家同盟に参加。8年小豆島に帰り療養生活を送る。著書に「橇」「氷河」「パルチザン・ウオルコフ」「武装せる市街」などがある。戦後30年にシベリア出兵の時の記録が「軍隊日記」として刊行された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒島伝治」の意味・わかりやすい解説

黒島伝治
くろしまでんじ
(1898―1943)

小説家。香川県小豆島(しょうどしま)の生まれ。早稲田(わせだ)大学予科選科中退。1917年(大正6)上京、同郷の壺井(つぼい)繁治と知る。19年入隊、シベリアに出兵。除隊後ふたたび上京、『文芸戦線』に『銅貨二銭』(1926、のち『二銭銅貨』)、『豚群』(1926)など確かなリアリズムに支えられた農民文学を発表して好評を得る一方、『橇(そり)』(1927)、『渦巻ける烏(からす)の群』(1928)ではシベリア従軍体験に根ざした優れた反戦文学を結実させた。文戦派からのちに作家同盟に移り、文学的主題をいっそう先鋭化させたが、コップ(日本プロレタリア文化連盟)弾圧後しだいに行き詰まりをみせた。第一小説集『豚群』(1927)、第二小説集『橇』(1928)、『浮動する地価』(1930)、済南(せいなん)事件を扱った長編小説『武装せる市街』(1930)ほかの著書がある。

[大塚 博]

『『黒島伝治全集』全3巻(1970・筑摩書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黒島伝治」の意味・わかりやすい解説

黒島伝治
くろしまでんじ

[生]1898.12.12. 香川,小豆島
[没]1943.10.17. 小豆島
小説家。貧農の家に生れ,内海実業補習学校を卒業 (1914) 後,文学を志して上京 (17) ,早稲田大学に入学 (19) したが,召集されてシベリア出兵に従軍 (21) 。その経験をもとにプロレタリア文学運動に参加,『橇 (そり) 』 (27) ,『雪のシベリア』 (27) ,『渦巻ける烏の群』 (28) ,『国境』 (31) などの反戦小説で作家としての地位を固めた。一方,『電報』 (25) ,『二銭銅貨』 (26) ,『豚群』 (26) など農民文学の作家として知られ,農村の暗さを底辺から描く佳作を相次いで発表した。プロレタリア作家にありがちな観念的傾向はなく,地味ではあるが,貧困に追われる農民の哀歓や願望を素朴に写し,一種瓢逸な趣の漂う作風であった。

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百科事典マイペディア 「黒島伝治」の意味・わかりやすい解説

黒島伝治【くろしまでんじ】

小説家。香川県小豆島生れ。早大予科選科中退。《文芸戦線》同人となり,ナップ所属の日本プロレタリア作家同盟員となった。シベリア出兵の経験から《渦巻ける烏の群》(1928年)その他の反戦小説を書き,また郷里の農村に取材した農民小説を書いた。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「黒島伝治」の解説

黒島伝治 くろしま-でんじ

1898-1943 大正-昭和時代前期の小説家。
明治31年12月12日生まれ。「豚群(とんぐん)」などの農民小説,シベリア従軍体験にもとづく「渦巻ける烏(からす)の群」などの反戦小説でみとめられる。労農芸術家連盟,のち日本プロレタリア作家同盟に所属。昭和18年10月17日死去。46歳。香川県出身。早大中退。作品はほかに「武装せる市街」など。
【格言など】どうして,ロシア人を殺しに,こんな雪の曠野にまで乗り出して来なければならなかったか!(「橇」)

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367日誕生日大事典 「黒島伝治」の解説

黒島 伝治 (くろしま でんじ)

生年月日:1898年12月12日
昭和時代の小説家
1943年没

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