翻訳|division
歩兵,戦車,砲兵等を基幹とし,その他これらを支援する諸兵種を連合させ編成した基本的な作戦部隊。18世紀末,ナポレオンによって初めて作られた組織であり,通常は1万~2万5000人の兵力を保有する。この師団の出現によって,単一の兵種の編成部隊ではできなかった部隊の独立作戦が可能になり,戦術,部隊運用にも大きな進歩を促すこととなった。以来各国において,師団は軍または軍団の基幹部隊として,主要な作戦正面を担当する基本的な作戦部隊に位置づけられ,また固有の編制をもつ最大の部隊としている国が多い。その編制の内容は,各国の戦略戦術思想や予想戦場の特性等によって差異があるが,タイプとしては歩兵,機械化,機甲,戦車,空挺,空中機動等の諸師団があり,旅団または連隊を基幹として編成している。なお,近年の各国の師団は,特に戦車,各種装甲戦闘車,ロケット,ミサイル等の装備の近代化が図られており,戦力の向上が著しい。
旧陸軍においては,1888年に従来の鎮台を廃止し,2個歩兵旅団を有する師団編成を採用した。師団は師団司令部,歩兵旅団2(歩兵連隊各2),騎兵連隊1,砲兵連隊1,工兵大隊1,輜重(しちよう)兵(輸送)大隊1で基幹の4単位(この場合歩兵連隊)が原型である。1937年,師団急造に伴い,3単位(旅団2を歩兵団司令部1,歩兵連隊3)に改められた。平時の常備師団は,近衛師団,第1~20(うち13,15,17,18が欠)師団で,戦時動員で新たに編成される師団を特設師団といった。
陸上自衛隊は1961年,従来の管区隊を師団に改編して各方面隊の基幹部隊とし,各国の例にならった。ただし,日本の地形区画に適合させる等のため,通常の師団よりもかなり小型にした。陸上自衛隊は,外国の歩兵にあたる普通科部隊を主体とした師団12個と,戦車部隊を主体とした機甲師団1個の,計13個師団を保有している。普通科を主体とした師団は,編成人員約9000のものと約7000のものとの2種類にわけられ,普通科連隊3~4,特科(砲兵)連隊1,戦車,施設(工兵),通信の各大隊その他の部隊をもって編成されている。また機甲師団は,普通科連隊1,戦車連隊3,特科連隊2,後方支援連隊1,施設,通信の各大隊その他の部隊をもって編成され,火力および機動力が強化されている。
執筆者:橋口 茂
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戦闘・補給・管理・衛生など総合的な機能をもち、独立的に作戦を遂行しうる、陸軍の主要な職種(兵科)をひとまとめにした諸職種連合の部隊。陸上自衛隊では最大の編制部隊で、方面隊の基幹部隊として主要な作戦正面を担任する基本的な作戦部隊である。通常、少将ないし中将(陸上自衛隊では陸将)によって指揮される。近代的な師団制度は、フランス革命期、とりわけナポレオン1世によって確立され、世界の陸軍編制の基本となった。海空軍でも師団の語を用いることがある。師団の内容は、時代と兵器の進歩、戦争形態や国情などで変遷し、今日では歩兵師団、機械化歩兵師団、機甲(戦車)師団、砲兵師団、空挺(くうてい)師団、海兵師団、航空兵師団などがある。陸上自衛隊は13個師団(各3ないし4個普通科連隊基幹の12個歩兵師団と3個戦車連隊基幹の第7機甲師団)・2個混成団基幹の18万人体制を長くとってきたが、ソ連崩壊、ポスト冷戦などの戦略環境変化に対応し、1996年度(平成8年度)以降、師団改編(9000人から即応予備自衛官を含む約7700人へ定数減など)・旅団化などのスリム化、コンパクト化、効率化を実施し、9個師団・6個旅団基幹の16万人体制へと逐次移行している。
[中山敏雄]
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陸軍の常備兵団としての最大単位の部隊で,独立して作戦しうる戦略単位。1888年(明治21)5月に,それまでの各軍管を担当する鎮台を改編したもの。歩兵旅団2(歩兵連隊各2),騎兵連隊1,砲兵連隊1,工兵大隊1,輜重(しちょう)兵大隊1,師団司令部などから構成される。1937年(昭和12)の師団急増にともない,旅団2を歩兵師団司令部1,歩兵連隊3に改めた。平時には人員約1万人,戦時には約2万5000人の規模。宇垣軍縮から日中戦争まで師団数は17だったが,戦争開始から2年間で倍増され,第2次大戦の敗戦前には189個師団になっていた。
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…実力部隊である軍隊は通常,陸,海,空の三軍から成るが,国によってはこのほかに海兵隊をもち,かつてのソ連は防空軍,戦略ロケット軍を独立した軍種としていた。陸軍の諸兵科統合の基本作戦部隊は師団である。師団は歩兵(狙撃),戦車,機械化,空挺等の種類があり,山岳師団をもつ国もある。…
…王は兵1000人について砲6門を配備した。ナポレオン1世は,歩兵,騎兵,砲兵を統合して師団を編成し,師団を数個あわせて軍団とした。戦闘にあたっては砲兵を要点に集中し,火砲の威力を最大限に利用する戦術をとった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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