精選版 日本国語大辞典 「辞状」の意味・読み・例文・類語
じ‐じょう‥ジャウ【辞状】
- 〘 名詞 〙
- ① 令制で、下から上に出す公文書の一つ。四等官に属さない下級官吏、または一般庶民が官庁に上申する場合に用いるもの。下から上に出す様式として、ほかに下級官庁が上級官庁に送る解(げ)や、四等官に属する官吏が官庁に提出する牒(ちょう)があり、実際には辞状を用いるべき場合にも解を用いることが多く、解や牒と辞の混同もしばしば見られる。辞。
- [初出の実例]「上件野地、売二東大寺一者、郡依二辞状一」(出典:東大寺古文書‐天平勝宝七年(755)三月九日・越前国司公験)
- ② 平安中期から鎌倉時代にかけて見られる、公文書の辞の書式を用いて作られた私文書。譲状(ゆずりじょう)、売券(ばいけん)、借券(しゃっけん)などの一部にある。また、南北朝時代以降、官職とそれに伴う私的権益との区別があいまいになり、官職への任命が権益の譲与として観念されるようになると、任命書を辞状と呼ぶ場合も生じた。
- [初出の実例]「当国の守護職をだに、綸旨に御辞(ジ)状を副(そへ)て下し給り候はば」(出典:太平記(14C後)一六)
- ③ ある職に新たに任じられ、あるいはすでにその職にある者が、その職を辞退する意思を記して上申する文書。天皇に差し出し勅答のあることを本来とする辞表に対して、より広く用いられる。〔本朝文粋(1060頃)〕
- [初出の実例]「じじゃうをかいて禁中へ挙玉ふ」(出典:幸若・三木(室町末‐近世初))