(読み)ジ

デジタル大辞泉 「辞」の意味・読み・例文・類語

じ【辞〔辭〕】[漢字項目]

[音](呉) [訓]やめる ことば
学習漢字]4年
ことば。文章。「辞書辞令訓辞言辞謝辞修辞助辞措辞題辞遁辞美辞名辞
やめる。ことわる。「辞職辞退辞任辞表固辞
別れを告げる。「辞去辞世
漢文文体の一。「辞賦
[名のり]こと

じ【辞】

ことば。「歓迎の
漢文の一体。楚辞系統をひく様式で、押韻して、朗誦に適した文。陶淵明の「帰去来辞」など。
単語文法上の性質から二つに分類したものの一。に対する。単独では文節を構成しえず、常に詞(自立語)に伴って文節を構成する語。助動詞助詞がこれに属する。時枝誠記ときえだもとき学説では、助動詞・助詞のほか、接続詞感動詞などもこれに含まれる。
[類語]言葉言辞言語言の葉

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精選版 日本国語大辞典 「辞」の意味・読み・例文・類語

じ【辞】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ことば。文章。語句。
    1. [初出の実例]「稍開来封其辞云々者、先所奉書返畏度疑歟」(出典:万葉集(8C後)一八・四一三二・右詞文)
    2. 「あまた請坐の辞あり」(出典:正法眼蔵(1231‐53)陀羅尼)
    3. [その他の文献]〔易経‐繋辞・上〕
  3. 公式令に規定されている文書の様式の一つ。下級官人・庶民が官司に差出す文書様式とされているが、現存しているものはなく、また一般には解(げ)の様式の文書が作製されることが多い。辞状。
    1. [初出の実例]「年月日位姓名。辞。〈此謂雑任初位以上〉〈略〉其事云云。謹辞」(出典:令義解(718)公式)
  4. 中国の、古典文学の一ジャンル。もと中国古代の南方の民間歌謡の呼び名であったが、しだいに歌わないで朗誦するだけとなり、長篇化した。のち賦ともいい、あわせて辞賦とも呼ぶ。韻はふむが規則はきわめてゆるい。→
  5. 日本語の単語を文法上の性質から二つに大分類した一つ。付属語(助詞・助動詞)をいう。てにをは。時枝誠記の文法説では助詞・助動詞・接続詞・感動詞・ある種の副詞を含む。⇔

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普及版 字通 「辞」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 13画

(旧字)辭
19画

(異体字)
15画

[字音]
[字訓] とく・ことば・ことわる

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
旧字は辭に作り、(らん)+辛(しん)。は架糸の上下に手を加えている形で、糸の乱れているさまを示し、亂(乱)の初文。亂はその乱れている糸を乙(いつ)(骨べらの形)で解きほぐしてゆくのであるから、「亂(をさ)む」とよむべき字である。辭はその乱れている糸を辛(はり)で解きほぐしてゆくのであるから、亂と同じく治める意で、辞説の意に用いる。それは獄訟のとき、その嫌疑を解き明かすこと、その弁解の辞をいう。〔説文〕十四下に「くなり。・辛に從ふ。辛を(をさ)むるは、ほ辜(つみ)を理(をさ)むるがごときなり」(段注本)とする。辛を辜(こ)にして罪辜の意とし、を「(をさ)む」とよんで、その会意の字とするが、亂が骨べらで乱れた糸を解くのと同じく、辭は辛でその乱れを解く意である。〔説文〕に重文として(し)の字を録するが、は司の繁文。司は祝詞によって神を祠(まつ)る意の字。辭は神判のとき、その嫌疑を解く辞をいう。神に対して弁明を試みる意であるから、と声義が近い。〔楚辞〕の辞は、神に訴え申す歌辞をいう。

[訓義]
1. とく、嫌疑を解く、神に告げて嫌疑を解く。
2. うったえる、つげる、ことわけていう、そのことば。
3. ことをわけてつげ、ことわる、あやまる、わびる、おしえる、せめる、さとす。
4. わかれる、さる、やる、しりぞく。
5. 神につげることば、その歌。
6. 祠と通じ、まつる。

[古辞書の訓]
名義抄〕辭 コトバ・イナフ・トドマル・サル・ワカル・マカリ・マウス・ケガス/ イナブ・コトバ・マウス 〔字鏡集〕 ワカル・マウシス・イナフ・ノガル・ケガス・トドム・マウス・マカリ・サル・コトバ・コトニ・シス

[語系]
辭・詞・祀・祠ziは同声。神に対して嫌疑を解くことを辭といい、神に対して祈る歌詩を詞・辭といい、祀ることを祀・祠という。金文のは司siの初文で、神意を伺うことをいう。

[熟語]
辞案・辞意・辞違・辞家・辞官・辞・辞観・辞気・辞義・辞儀・辞却・辞給・辞去・辞拒・辞訓・辞決・辞訣・辞見・辞言・辞語・辞告・辞采・辞歳・辞旨・辞指・辞謝・辞趣・辞訟・辞章・辞状・辞情・辞譲・辞色・辞職・辞人・辞塵・辞世・辞悽・辞説・辞阻・辞宗・辞藻・辞竈・辞・辞対・辞退・辞託・辞致・辞朝・辞牒・辞調・辞吐・辞年・辞費・辞避・辞表・辞賦・辞柄・辞別・辞弁・辞貌・辞命・辞理・辞令・辞霊・辞禄
[下接語]
異辞・偉辞・逸辞・婉辞・音辞・辞・嘉辞・歌辞・賀辞・甘辞・含辞・玩辞・辞・偽辞・虚辞・曲辞・訓辞・辞・謙辞・言辞・古辞・固辞・爻辞・巧辞・好辞・宏辞・告辞・砕辞・賛辞・式辞・失辞・謝辞・邪辞・修辞・祝辞・書辞・助辞・頌辞・属辞・世辞・正辞・説辞・占辞・措辞・辞・造辞・辞・多辞・題辞・託辞・弔辞・陳辞・通辞・騁辞・伝辞・答辞・辞・拝辞・卑辞・辞・費辞・美辞・微辞・繆辞・浮辞・辞・文辞・弁辞・褒辞・卜辞・曼辞・約辞・腴辞・有辞・遊辞・用辞・俚辞・両辞・令辞・礼辞・麗辞・弄辞

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「辞」の意味・わかりやすい解説

辞(日本語文法)

日本語の文法で、単語を文法上の性質により2大別した場合の一類。他の一類を詞(し)という。立場によってその内容は異なり、橋本進吉によれば、つねに他の一類である詞に伴って文節を構成するもので、これを付属辞または辞、助辞と称する。これに属するのは助詞と助動詞である。時枝誠記(もとき)は、概念化の過程を経ず、言語主体の立場のみを直接的に表現する語類を辞とする。この立場での辞に属するのは助詞、助動詞、感動詞、接続詞、陳述副詞である。ただし、一般に助動詞とされる「れる・られる・せる・させる・たい」(文語では「る・らる・す・さす・しむ・まほし・ごとし」)などは、客体的な事柄を述べるので、辞とは認めず、詞のなかの接尾語とする。

[青木伶子]

『橋本進吉著『国語法研究』(1948・岩波書店)』『橋本進吉著『助詞・助動詞の研究』(1969・岩波書店)』『時枝誠記著『国語学原論』(1941・岩波書店)』『時枝誠記著『日本文法 口語篇』(1950・岩波全書)』『渡辺実著『国語構文論』(1971・塙書房)』


辞(中国古典文学)

中国古典文学の文体の一つ。代表的なものは「楚国(そこく)の辞(うた)」すなわち「楚辞(そじ)」である。戦国時代の末、楚の国に宰相詩人屈原(くつげん)とその一派が出て、新形式の詩をつくり始めたが、それは楚(揚子江(ようすこう)の南方)地方の民謡を起源にするという。同じ古代歌謡である『詩経(しきょう)』が北方民族的であり、音楽にあわせて歌われたのに対し、『楚辞』は南方民族的であり、空想と憂愁のかげ深い韻文を主とする。たとえば「離騒(りそう)」は「騒(うれえ)に離(あ)う」の意で、屈原が流謫(るたく)されて山野を漂泊し、憂悶(ゆうもん)のすえ投身自殺のやむなきに至った経過を歌う優れた叙情詩である。このほか、漢代の武帝の「秋風辞(しゅうふうのじ)」、六朝(りくちょう)時代の陶淵明(とうえんめい)「帰去来辞(ききょらいのじ)」などが知られる。

[杉森正弥]

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【品詞】より

…この3分類は,十分に文法機能のうえから考察した結果ではなかろうが,17世紀初めのJ.ロドリゲスの《日本小文典》は,日本人が全品詞を〈名,ことば,てには〉の3語に包括していると述べている。〈てには〉は助辞,〈ことば〉は動詞(現在の用言。形容詞,形容動詞を含む),〈名〉はその他のいっさいである。…

※「辞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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