近代劇協会(読み)きんだいげききょうかい

改訂新版 世界大百科事典 「近代劇協会」の意味・わかりやすい解説

近代劇協会 (きんだいげききょうかい)

劇団。文芸協会を退会した上山草人(かみやまそうじん)・山川浦路(うらじ)夫妻が,伊庭孝(いばたかし)(1887-1937),柴田勝衛,杉村敏夫らの俳優,演出家とともに,1912年5月に結成,坪内逍遥と森鷗外が顧問となった。同年10月有楽座でイプセンヘッダ・ガブラー》を旗揚げにとりあげ,主演女優山川浦路のヘッダが好評を博した。翌13年の第2回公演にはゲーテ(鷗外訳)の《ファウスト》を帝劇で上演,素人女優の衣川孔雀(きぬかわくじやく)のグレートヘンの新鮮な演技で注目を集め成功をおさめた。が,伊庭,杉村が脱退して,草人の個人劇団の色彩が強まった。以降鷗外訳《マクベス》や,イプセン,ハウプトマンチェーホフ《桜の園》などの大作を野心的にとりあげたが,内容は空疎で芸術的な実質をともなわず,《金色夜叉(こんじきやしや)》のような通俗劇も上演した。19年《リヤ王》(逍遥訳)の公演を最後に,経済的な行詰りから解散,草人・浦路夫妻は失意のうちに渡米,ハリウッド入りした。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「近代劇協会」の意味・わかりやすい解説

近代劇協会
きんだいげききょうかい

劇団名。上山草人・山川浦路夫妻が伊庭孝らと創立した。 1912年イプセンの『ヘッダ・ガーブラー』で旗揚げ,翌年ゲーテの『ファウスト』を帝国劇場で本邦初演。しかし,次第にレパートリーや演技が新派寄りになったことと劇団の内紛が原因で,19年の『リア王』を最後に解散。その後夫妻は渡米,草人はハリウッド入りして早川雪洲に次ぐ日本人2人目の映画スターとして活躍した。

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