過マンガン酸カリウム(読み)カマンガンサンカリウム(英語表記)potassium permanganate

デジタル大辞泉 「過マンガン酸カリウム」の意味・読み・例文・類語

かマンガンさん‐カリウム〔クワ‐サン‐〕【過マンガン酸カリウム】

暗紫色の柱状結晶。水溶液は濃い赤紫色。強力な酸化剤で、分析薬・殺菌剤漂白剤などに用いる。化学式KMnO4

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精選版 日本国語大辞典 「過マンガン酸カリウム」の意味・読み・例文・類語

かマンガンさん‐カリウムクヮマンガンサン‥【過マンガン酸カリウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( マンガンは[ドイツ語] Mangan カリウムは[ドイツ語] Kalium ) 化学式 KMnO4 黒紫色の斜方晶系柱状結晶で、水溶液は過マンガン酸イオン(MnO4-)の赤紫色を示す。殺菌剤、収斂(しゅうれん)剤などの医薬品に用いられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「過マンガン酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

過マンガン酸カリウム (かマンガンさんカリウム)
potassium permanganate

化学式KMnO4。酸化数Ⅶのマンガンのオキソ酸である過マンガン酸HMnO4のカリウム塩。緑色光沢のある暗紫色の斜方晶系柱状晶。MnO4⁻は正四面体形構造をもつ。比重2.70。水100gに対する溶解度6.34g(20℃)。アセトンエチルアルコール氷酢酸に可溶。固体を加熱すると200℃で酸素を放ってマンガン酸カリウムK2MnO4酸化マンガン(Ⅳ)MnO2とになり,さらに酸化マンガン(Ⅲ)Mn2O3となる。濃厚溶液を強アルカリ性にしたときにも緑色のマンガン酸イオンとなって酸素を発生する。濃硫酸とまぜると爆発性の油状物質(Mn2O7)を生ずる。酸性溶液中ではきわめて強い酸化剤として働き,反応の結果ほとんど無色のMn2⁺となる。

 MnO4⁻+8H⁺+5e⁻─→Mn2⁺+4H2O

この反応は過マンガン酸塩滴定に使われる。中性およびアルカリ性溶液中でもかなり強い酸化剤として働く。

 MnO4⁻+2H2O+3e⁻─→MnO2+4OH⁻

燃えやすい物質とまぜ,摩擦すると発火爆発する。水溶液あるいは結晶の表面は光によって分解するので暗色瓶にたくわえる必要がある。

 工業的には軟マンガン鉱(主成分MnO2)に水酸化カリウムを加え,空気を通じながら加熱融解してマンガン酸カリウムをつくり,これを水で抽出して塩素または電解により酸化するか,あるいは二酸化炭素を用いてつぎの不均化反応を起こさせてつくる。

 3MnO42⁻+4H⁺─→2MnO4⁻+MnO2+2H2O

実験室での製法も原理的には同じである。

 酸化剤,分析試薬(過マンガン酸塩滴定など),殺菌消毒剤,有機合成剤,漂白剤などとして用いられる。水溶液は反応により色が変わりやすいので医薬学の領域ではカメレオン水と呼ばれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「過マンガン酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

過マンガン酸カリウム
かまんがんさんかりうむ
potassium permanganate

過マンガン酸塩の代表的なものの一つ。

 マンガン酸カリウムK2MnO4の水溶液を塩素で酸化するか、二酸化炭素を通じて不均化反応をおこさせる。工業的には、軟マンガン鉱MnO2を空気中で水酸化カリウムと強熱して得られる融成物を原料とし、アルカリ性で電解酸化してつくる。


 濃赤紫色結晶。反射光では緑色。熱すると200℃で酸素を放って分解する。

  2KMnO4―→K2MnO4+MnO2+O2
 水によく溶け酸性でもアルカリ性でも強い酸化剤として働く。酸性水溶液では
  MnO4-+8H++5e―→Mn2++4H2O
アルカリ性水溶液では
  MnO4-+2H2O+3e-―→MnO2+4OH-
となる。アセトン、エタノールに溶ける。水溶液をカメレオン液ということがある。硫酸酸性でシュウ酸を二酸化炭素に、鉄(Ⅱ)を鉄(Ⅲ)に、ヨウ化物をヨウ素に酸化しマンガン(Ⅱ)塩となる。アルカリ性では速やかにマンガン酸塩に還元され、ついで酸化マンガン(Ⅳ)の水和物を沈殿する。濃水溶液を強アルカリ性にすると緑色溶液(マンガン酸イオン)となって酸素を発生する。濃硫酸と混合すると爆発性の油状物質Mn2O7を生成する。滴定分析の酸化剤、有機合成、漂白、殺菌剤などに用いる。

[守永健一・中原勝儼]


過マンガン酸カリウム(データノート)
かまんがんさんかりうむでーたのーと

過マンガン酸カリウム
  KMnO4
 式量  158.0
 融点  ―
 沸点  ―
 比重  2.703
 結晶系 斜方
 溶解度 6.34g/100g(水20℃)

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化学辞典 第2版 「過マンガン酸カリウム」の解説

過マンガン酸カリウム
カマンガンサンカリウム
potassium permanganate

KMnO4(158.03).軟マンガン鉱MnO2をKOHと加熱処理して得たマンガン酸カリウムK2MnO4を,水で抽出後電解酸化すると得られる.斜方晶系のイオン結晶.電荷移動スペクトルによる濃い赤紫色の結晶(反射光では緑色).MnO4イオンは四面体型.Mn-O約1.63 Å.∠O-Mn-O約110°.密度2.70 g cm-3.加熱すると200 ℃ 以上で分解する(まずK2MnO4,MnO2,O2 になり,さらにMn2O3となる).室温,空気中ではかなり安定であるが,太陽光で分解が促進される.水に可溶(6.51 g/100 g(20 ℃)).水溶液中でも徐々に分解する.水溶液は強アルカリ性にすると,酸素を発生して緑色のK2MnO4にかわる.K2MnO4は,酸性では不均化して一部KMnO4となり紫色となる.これは過マンガン酸(塩)共通の性質であるが,そのうちの代表的なK塩の水溶液をカメレオン液ともいう.強力な酸化剤で,種々の物質を酸化する.とくに硫酸酸性では,還元剤を定量的に酸化し,自身は還元されて濃紫色が消失することを利用して,酸化還元滴定に利用される([別用語参照]過マンガン酸塩滴定).滴定試薬のほかに,酸化剤として,有機合成でサッカリン,アスコルビン酸など多くの製造過程で利用される.また,飲料水の殺菌,さらにワックス,油脂,麦ワラなどの漂白剤に用いられる.[CAS 7722-64-7]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「過マンガン酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

過マンガン酸カリウム
かマンガンさんカリウム
potassium permanganate

化学式 KMnO4 。緑色光沢のある赤紫色結晶。空気中で安定。約 200℃で分解し,酸素を発生する。比重 2.70。水に易溶,アセトン,アルコールに少し溶ける。アルカリ,有機物により容易に分解。塩酸と反応し塩素を発生する。濃硫酸によりしばしば爆発が起り危険。酸化剤として広範な用途があり,過マンガン酸カリウム滴定 (酸化還元滴定 ) ,有機合成,殺菌,漂白などに広く用いられている。

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百科事典マイペディア 「過マンガン酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

過マンガン酸カリウム【かマンガンさんカリウム】

化学式はKMnO4。比重2.70。緑色光沢ある赤紫色柱状晶。熱すると分解して酸素を放つ。水,アセトン,アルコールなどに可溶。強い酸化剤で,分析試薬,有機合成用試薬,漂白剤,火薬,医薬品として使用。工業的には軟マンガン鉱に水酸化カリウムを加え空気酸化し,水で抽出してのち塩素または電解などでさらに酸化してつくる。

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栄養・生化学辞典 「過マンガン酸カリウム」の解説

過マンガン酸カリウム

 KMnO4 (mw158.03).強い酸化剤.飲料水の清潔さの検査などに使われる.

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世界大百科事典(旧版)内の過マンガン酸カリウムの言及

【カメレオン水】より

…この様相が,あたかもカメレオンの保護色のように変化しやすいのでこの名称を与えられた。医・薬学の分野では,赤紫色の過マンガン酸カリウム水溶液KMnO4をカメレオン水と称することもある。過マンガン酸塩は,酸性水溶液中で強い酸化力をもち,多くの有機物や還元性無機物質と反応して赤紫色が直ちに脱色して,ほとんど無色のMn2+になる。…

【殺菌剤】より

…農業用にも種子の発芽促進,貯蔵などに利用されている。同様の目的のために過マンガン酸カリウムが創傷や粘膜の洗浄に用いられるが,それほど殺菌効果は認められない。(9)色素類その他 色素が殺菌効果を有することは早くから知られていた。…

※「過マンガン酸カリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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