改訂新版 世界大百科事典 「過塩素酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説
過塩素酸ナトリウム (かえんそさんナトリウム)
sodium perchlorate
化学式NaClO4。工業的には,塩素酸ナトリウムNaClO3の濃厚水溶液の陽極酸化で製するか,塩素酸ナトリウムを融解して分解し,濃塩酸を加えて抽出(副生するNaClは難溶)後,塩酸を除去する。
4NaClO3─→3NaClO4+NaCl
実験室では,過塩素酸水溶液を炭酸ナトリウムで中和後,中性水溶液を蒸発し,1水和物NaClO4・H2O(50℃以下)または無水和物(50℃以上)として析出させる(両者の転移温度は52.75℃)。無水和物は無色斜方晶系の結晶。融点482℃(分解をともなう)。比重2.02。308℃で等軸晶系に転移する。吸湿性はない。水に易溶で,100gの水に対する溶解度は169g(0℃),191g(15℃),283g(55℃),330g(100℃)。メチルアルコール,エチルアルコール,アセトンに可溶,エーテルに不溶。有機物や可燃物との混合や衝撃により爆発,濃硫酸との接触でも爆発する。1水和物は無色単斜晶系の結晶。吸湿性があり,130℃で分解する。
過塩素酸および他の過塩素酸塩の製造,火薬工業に使用する。実験室では,その著しく大きい溶解度,ClO4⁻イオンの金属錯体をつくりにくい性質が,水溶液のイオン強度調整,媒質条件調整に広く利用される。
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報