陽極酸化(読み)ヨウキョクサンカ

化学辞典 第2版 「陽極酸化」の解説

陽極酸化
ヨウキョクサンカ
anodic oxidation

電気化学反応では,アノード反応(陽極反応)は電子を放出する反応であり,すべて酸化反応になるが,陽極酸化という用語は多少あいまいではあるが次の意味で用いられる.

(1) イオン価の増大する反応:

   Fe(CN)64- → Fe(CN)63- + e

(2) アニオンの重合反応:

   2SO42- → S2O82- + 2e

(3) 着目する物質について酸素の増加する反応:

   ClO3 + H2O → ClO4 + 2H + 2e

   2Fe + 3H2O → Fe2O3 + 6H + 6e

(4) 有機物の酸化:

   2CH3COO → C2H6 + 2CO2 + 2e

金属のアノード溶解(Fe → Fe2+ + 2e),酸素発生(4OH → O2 + 2H2O + 4e)などは,通常,陽極酸化とはよばない.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「陽極酸化」の意味・わかりやすい解説

陽極酸化 (ようきょくさんか)
anodic oxidation
anodizing

電気化学反応装置における陽極anodeは酸化反応を行う場所として定義されるから,一般には電気化学的手段で酸化すること,すなわち電解酸化と同義の広い意味をもつ(anodic oxidation)。一方,狭い意味では,被処理材である金属を陽極として,適当な電解浴および電解条件下で酸化して,表面に酸化物皮膜を形成させる処理法をいう(anodizing)。アルミニウム合金マグネシウム合金などに適用される金属表面処理法の一種である。具体的な適用例については〈アルマイト〉の項を参照されたい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「陽極酸化」の意味・わかりやすい解説

陽極酸化
ようきょくさんか
anodic oxidation

電気分解の際の陽極での反応はすべて電子の除去による酸化反応であり,これを陽極酸化という。電極表面が電子の移動を容易にする一種の触媒反応と考えられる。この反応はしばしば各種の酸化反応による合成に利用される。これを電解合成という。電解合成には硫酸からペルオキソ二硫酸硫酸カリウムからペルオキソ二硫酸カリウム,マンガン酸カリウムから過マンガン酸カリウム塩素酸カリウムから過塩素酸カリウムなどを合成する例がある。多くは低温,高密度電流で電解することにより陽極酸化の結果として得ることができる。

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世界大百科事典(旧版)内の陽極酸化の言及

【電気化学工業】より

電鋳は電気めっきの原理を利用して表面の凹凸を再現するもので,レコード原盤の製造などが行われる。金属の陽極反応の応用の一つが陽極酸化で,アルミニウムAl,タンタルTa上に酸化皮膜を製造するのに用いられる。 水溶液電解では陽極における酸素発生,陰極における水素発生が他の電極反応と競争反応になるため,酸素より著しくイオン化傾向の小さい貴な物質(たとえばフッ素)の生成や,水素より著しくイオン化傾向の大きい卑な物質(アルカリ金属,アルカリ土類金属,希土類金属,アルミニウムなど)の生成を行うことができない。…

※「陽極酸化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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