化学辞典 第2版 「過――酸」の解説
過――酸
カサン
per――ic acid, peroxy――ic acid
【Ⅰ】従来,ある元素のオキソ酸のうちで,その中心元素の酸化数が代表的な酸より大きいものは,酸の名称の頭に過を付けたものがあった.現在では,この名称はIUPAC命名法により過塩素酸(perchloric acid)HClO4,過ヨウ素酸(periodic acid)HIO4,過マンガン酸(permanganic acid)HMnO4に限定されている.したがって,これら以外で,従来,過――酸とよばれていたものは,組成による名称が正式名となる.たとえば,過ルテニウム酸HRuO4はテトラオキソルテニウム(Ⅶ)酸が正式名称である.【Ⅱ】従来,ペルオキソ基-O-O-を含む酸も過――酸とよばれた.たとえば,過硫酸H2S2O8,過クロム酸H3CrO8であるが,これらはペルオキソ酸というべきである.上の例では,前者はペルオキソ二硫酸,正確には,μ-ペルオキソ-ヘキサオキソ二硫酸(2-)二水素,後者はテトラキス(ペルオキソ)クロム(Ⅴ)酸(3-)三水素([別用語参照]ペルオキソクロム酸塩)である.ただし,国際純正および応用化学連合(IUPAC)命名法では,過ホウ酸H2[(HO)2B(O2)2B(OH)2]を伝統名として残しているが,例外的である.【Ⅲ】過リン酸石灰は,過リン酸の塩(perphosphate)ではなく,製品名superphosphate of limeの訳語である.【Ⅳ】有機化合物で,カルボン酸R-CO-OHのカルボキシル基を-CO-OOHで置き換えた化合物をペルオキシ酸(過オキシ酸)(peroxy acid)といい,一般には,ペルオキシプロピオン酸のように命名するが,慣用となっている過酢酸,過ギ酸,過安息香酸は従来どおり使う.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報