遠隔計測(読み)エンカクケイソク(その他表記)remote measurement

デジタル大辞泉 「遠隔計測」の意味・読み・例文・類語

えんかく‐けいそく〔ヱンカク‐〕【遠隔計測】

リモートセンシング

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精選版 日本国語大辞典 「遠隔計測」の意味・読み・例文・類語

えんかく‐けいそくヱンカク‥【遠隔計測】

  1. 〘 名詞 〙 計測しようとする対象から離れている場所で行なう計測。高空の状態についての、ロケット人工衛星などを使っての計測など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「遠隔計測」の意味・わかりやすい解説

遠隔計測
えんかくけいそく
remote measurement

遠方にある計測対象の状態や挙動を把握できる計測情報を得ることをいう。一般には観測者が遠く離れた観測地点に行くことなしに、対象から伝送される信号によって、速やかに計測の目的を達することを意味している。ここで遠隔目安となる距離については、事業所の構内程度から、はるかな宇宙空間に至るまで、その範囲はきわめて広く、具体的に数値で表示される境界値が存在するわけではない。むしろ、距離の遠近が計測の確かさには影響を与えず、必要によってその延伸が可能であることが必要である。通常、信号の送信点と受信点とが定められた伝送路で結ばれている。信号の送受信の距離よりは、距離にかかわらず時間遅れがなく、即時性のある計測情報を獲得できる点にこの技術の特徴がある。

 一般的に情報伝達の障害となるのは、空間的な距離と時間とである。なぜなら、空間的な距離が存在するために情報が伝わらずに失われ、同様に時間が経過すると情報のもつ価値が失われるからである。したがって、情報が価値をもつ間に空間的な距離の障害を乗り越えて情報が獲得できなければならない。

 遠隔計測を実現するためには、計測地点に計測器(計器)を設置する必要があるが、環境によって条件が厳しいときには、少なくともセンサーsensorおよび信号を伝送する機器を設置し、さらに信号の伝送路を確保しなければならない。さらに、状況によっては、センサーの設置すら困難な場合がある。このときは、計測器、少なくともセンサーを航空機や人工衛星などに搭載し、対象からの距離を置いてセンシングを行い、そのデータを地上に伝送する。遠隔計測のうちで、このような場合をとくにリモート・センシングという。リモート・センシングのセンサーには、種々の電磁波センサーやカメラなどの画像センサーが使用される。たとえば、気象衛星から送られる大気圏外からの雲の画像は、われわれの日常生活に深い関係があるリモート・センシングの例である。

 遠隔計測が必要となるのは、次のような場合である。

(1)計測対象に人間が危険で近寄れない場合 高温活火山深海底、強い放射能が存在する場所など。

(2)計測対象が遠くに位置し、常時情報を収集するが、人を計測点に常時滞在させることが困難な場合 温度、風速降雨量などの気象計測や交通流計測など。

(3)遠方の対象の変化に即応する緊急対策が必要な場合 地震、津波、洪水など防災情報の収集伝達など。

(4)計測対象が広い範囲にわたって散在するが、計測データは1か所に集中して処理を行う場合 電力、ガス、水道メーターなどの自動検針、農作物の生育状況の調査など。

 (2)と(3)とを具体化する中央指令や集中制御システムは、両者の役割を一体化して、広域監視制御システムともよばれる。計測量を送る伝送方式には電子式で有線、無線がともに使用される。ほかの伝送方式として、流体方式(空気圧や油圧)などもあるが、伝送距離が短い場合や石油精製プロセスのように可燃物を扱うために防爆の必要がある場合に限られる。

[山﨑弘郎]

テレメータリング

信号を伝える方式に電子方式をとり、信号を送る手段として、エネルギーよりも情報としての意味をもった信号を送る信号伝送系(送受信装置と伝送路)の技術をテレメータリングtelemetering(もしくはテレメトリーtelemetry)とよぶ。

 テレメータリングの型式は多様である。その理由は、おもに送量変換器の出力形態が計測量としてのアナログ信号かデジタル信号か、また時間に関して連続信号か間欠的にサンプリングされた信号か、信号伝送方式が直送か搬送か、また変調方式か多重化方式か、さらに、伝送路は有線か無線かなど、条件の組合せが複雑であることによる。そのうち伝送の条件としては減衰、ひずみ、雑音などによって影響を受けにくい信号である周波数、位相、デジタル符号などが望ましい。

 送量変換器は、計測量を周波数や符号などの信号に変換する。送信装置は、センサーあるいは変換器からの信号を伝送に適した信号として伝送路に送り出す。遠距離を伝送し、しかも情報の質を良好に保つため、搬送方法をとる場合には搬送波を発生し、信号によってこれを変調し、適当なレベルまで電力増幅して信号を送出する。無線の場合にはアンテナによって送信する。伝送路の雑音は正確な情報の伝達を阻害し、長距離になるほど信号の減衰により信号対雑音比が悪化するから、しばしば中継が必要になる。受信装置は、送られてきた信号を受信したのち(搬送波の場合は復調して)受量変換器に配分する。受量変換器は、この信号を出力装置に適した信号に変換する。たとえば、連続監視に好都合である記録計を動作させる場合には、周波数や符号で送られてきた信号を直流電圧に比例変換する。また受量変換器の出力信号をコンピュータなどの情報処理システムによって情報加工する場合もある。出力装置は指示計、記録計のほかに情報処理装置端末の画像表示装置や各種の記録装置があり、多様な出力形態で計測情報を表示する。

 計測量を直流に変換して伝送する方式は、事業所やプラントにおける工業計測で広く使用される。そして、伝送信号が国際的に4~20ミリアンペアのレベルに統一されているが、直流伝送では多重化が困難で、伝送路のコストが大きくなるので、短距離に限定される。現在はデジタル符号に変換し、それを変調して送受信することが多い。遠距離、広域のシステムでは伝送路のコストを重視するから、搬送、多重化は当然のことであるが、無線方式を採用する。この場合、専用回線は回線数やコストで制限されるので、一般に開放されている周波数帯域(たとえば、特定小電力無線)が使用可能であるが、通信の即時性が保証されない。

 また、有線の経路を採択するときにも専用回線、公共回線(電話回線)、インターネット回線などが使われる。この順序で回線のコストが下がるが、情報の秘密保護や外部からの侵入には弱くなる。さらに有線の場合、光ファイバーによる信号伝送も可能である。導線に比べて多くの情報量を送ることができ、電磁誘導雑音の影響を受けない利点がある。実際、日本では、電話の幹線は北海道から沖縄まで光ファイバー伝送が使われている。

[山﨑弘郎]

自動検針システム

前述の(4)の自動検針はガスや水道で実施されている。当初、使用者のメーターを電話回線にアダプターを介して接続し、中央からの指令で、電話があいているときに電話回線を利用してメーターの指示を読み取る方式が実用化された。しかし、携帯電話の普及で固定電話回線の数が減少したので、無線を使用する方式に移行しつつある。ガスの自動検針システムでは、検針のための伝送路を活用して、中央から元栓を開閉するような機能が追加でき、保安に役だてている。

[山﨑弘郎]

『岡本謙一編著『地球環境計測』(1999・オーム社)』『山﨑弘郎他編著『計測工学ハンドブック』(2001・朝倉書店)』

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